瀬戸内海の海藻調査活動

読売新聞朝刊に読売関西フォーラム特集と題して、21世紀に向けて豊かな自然を取り戻し、規制や保全にとどまらず環境の創造へ踏みだそうという特集記事が掲載されました。その中で神戸大学・内海域機能教育研究センターの瀬戸内海での海藻調査活動が紹介されました。

藻類20万点を調査

60年代から水質汚染が進んだ瀬戸内海。国や自治体は79年施行の瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき、原因物質の流入規制などの基本計画をまとめた。水質はある程度改善されたが、近年は横ばい状態で赤潮も年間90件近く発生する。一方、埋め立ての増加で藻場や干潟、海浜などが消失している。

海洋生物の多様性を守るために---。兵庫県淡路町の神戸大内海域機能教育研究センターは瀬戸内海の海藻類の分布を調査、96年に標本集をまとめた。調査船「おのころ」による採集は十年がかり。内外16の大学や研究機関が参加し、ほぼ全域から約20万点を集めて284種を同定、188種を全6巻に収録した。

センター長の川井浩史教授は「日本の藻類は種類が多いが、瀬戸内海では減少している。標本集を基礎資料として種ごとの分布を知り、増減や変化を追い続ける」と話す。近い将来、海藻類の分布図を作りインターネットを通じた検索を可能にする。

理学部の培養庫では、胞子などから育てた約300点の培養株が息づいている。川井教授は「大型藻類の株を保存し、公開している施設はほとんどない。株を増やし、外部に提供する体制を作りたい。そうすれば、多様性の保存に役立てられる」と考えている。
(平成10年7月1日 読売新聞朝刊より転載)