The Ring of Intergenomicsインターゲノミクスの輪

宿主植物と病原糸状菌とのインターゲノミクス

細胞機能構造学研究室は電子顕微鏡解析技術を蓄積しており、主に植物と植物病原菌との相互作用について、微細胞像より機能を解き明かすアプローチで研究を進めてきた。これに分子生物学的アプローチを加え、「細胞学―分子生物学」の双方向性を維持した研究スタイルの構築を目指して行きたい。

インターゲノミクスへの考え・目論見アプローチ

我々の扱う植物と植物病原菌の相互作用では、ゲノムとゲノムが様々なレベルにおいて攻防を繰り返している。腐生菌から植物寄生菌への成立過程においてどのような能力を獲得したのか、それに対して植物はどのような対抗手段を講じているのか、生物に普遍的な戦略あるいは独自に進化した戦略を解き明かして行きたい。これらを明らかとするために、共通の宿主植物上で様々な病原菌の感染様式を遺伝子・形態レベルで比較する“comparative phytopathology”分野を新たに構築していく。まずは病原菌から生成される細胞外物質(ECM)や活性酸素種(ROS)に着目し、病原性への役割について明らかにしていく。

植物―植物病原菌の寄生性成立過程はどのようなものなのだろうか?果たして明確に相手を識別した応答を行っているのだろうか?その目的は? Comparative phytopathologyによる知見の集積は植物病理学分野におけるインターゲノミクスを理解することにつながる。さらにこのインターゲノミクスの概念を用いれば、接近してきたゲノムに対する応答と解釈することができ、他の生物間相互作用システムとの垣根が徐々に取り除かれた俯瞰的な生物現象、例えば共生関係、生殖行動、さらに動物の系等と共通のゲノム応答として捉えることが可能になるのではないかと期待している。