光合成・基本代謝ネットワークを明らかにして作物の光合成能力を改良する
深山 浩
光合成は光のエネルギーを利用して二酸化炭素と水からデンプンを作る反応として知られていますが，実際の反応はそれほど単純なものではありません．光合成の反応はそれ自体がとても複雑であるうえ，細胞内の様々な代謝が互いに影響を及ぼしあって成立しています．また，それらの反応に関係する遺伝子に関しても異なるシグナル伝達系が発現調節に関係し代謝反応とも複雑に相互作用しています．このような光合成反応における代謝と遺伝子発現との関わり全体を光合成・基本代謝ネットワークと呼んでいます．光合成能力を改良し作物の生産性を向上させるためには，この光合成・基本代謝ネットワークの全体像を明らかにすることが必要と考えています．そこで，私たち資源植物生産学研究室では光合成・基本代謝ネットワークに関係すると予想される遺伝子の機能について研究を進めています．実際の方法としては，遺伝子組換イネを作出して，その遺伝子の働きを強めたり弱めたりした場合の光合成，代謝，生長に及ぼす影響を分析しています．また，イネだけではなく光合成能力の高いC4植物の持つ遺伝子についても注目して研究しています．導入した異なる植物種の遺伝子とイネゲノムとの相互作用から新しい発見があることを期待しています．
