Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第7回 インターゲノミクスセミナー
「植物の生殖にみるインターゲノミクス」

講演タイトルと講演者

「イネの生殖関連遺伝子の機能解析と多様性研究への取り組み」
野々村賢一 先生(国立遺伝学研究所実験圃場)
「花粉管ガイダンス分子から見る細胞間シグナリングと隔離障壁」
東山哲也 先生(名古屋大学大学院理学研究科)

世話人より

 第7回セミナーインターゲノミクスセミナーが、平成20年1月17日(木)に改装された農学部C101において、「植物の生殖にみるインターゲノミクス」と題して開催された。年度末の忙しい時期にもかかわらず多くの教員や学生が参加していただいた.農学部からだけでなく、理学部や自然科学研究科からの参加者も見られた.イネの生殖に関わる遺伝子を研究されている野々村賢一先生と花粉管ガイダンスを研究されている東山哲也先生を講師として、それぞれ1時間程度ずつ講演をしていただいた.講演後の質疑が非常に活発で,時間の都合で中断せざるを得なかった.世話人が自信をもってお招きしたお二人の講演は成功裏に終わった.

 植物(特に被子植物)の生殖は複雑なメカニズムが絡み合っているが,最終的には精細胞と卵細胞との受精が行われ,子孫ができる.体細胞から精細胞や卵細胞に至るまでには減数分裂という大事なイベントがあり,めしべやおしべ・花粉ができる.次にめしべの先にある柱頭に花粉が付着する受粉が行われる.受粉した花粉から柱頭組織内に進入した花粉管が胚珠に向かい,受精へと導かれる.また外部から別の植物の花粉が受粉しても子孫ができるまでには至らないことが多く,何らかの相互作用や障壁がはたらいていると想像できる.インターゲノミクスの概念からいえば、今回の講演内容は、(始原)生殖細胞と体細胞とのインターゲノミクス,(始原)生殖細胞同士のインターゲノミクスと捉えることができると考えられる.

野々村先生はイネの減数分裂を中心とした生殖に関わる幾つかの遺伝子について講演いただいた.そのうちsmall RNAが絡んだ遺伝子があり,第6回インターゲノミクスセミナーとの関連が見受けられたのは望外だった.機能的に新規な遺伝子もあり,減数分裂については不明な点がまだ残っていると印象づけられた.一方公演中の染色体や組織が綺麗な写真は学生等を感心させていた.生殖関連遺伝子の多様性解析から将来の受精障壁を乗り越えて,外来の有用遺伝子を導入できるようにすること模索されていた. 次に東山先生は受粉後に伸長する花粉管が卵細胞へと適切に到達する花粉管ガイダンスについてお話いただいた.卵細胞を含む胚嚢が母体組織から突出するトレニアという植物に注目され,in vitroでの生殖活動を映像として発表された.これらの映像は本当に綺麗で生殖活動がどのように行われているのか詳細に観察できた.胚嚢が形成・成熟するに伴い、卵細胞の隣にある2つの助細胞が花粉管の誘引を開始すること,誘引シグナル分子の候補を同定したことを明らかにされた.

講演会の後には、講師の先生方と三宮で酒席を共にさせて頂いた。講演会では詳しく聞けなかったことや研究の話で、楽しい時間を過ごすことができた。年度末のお忙しい時期にもかかわらず,神戸にご足労いただき,素晴らしいご講演に、この場をお借りして再びお二人の講師の先生方に感謝の意を表したい

講演者からのコメント

野々村賢一 先生

参加者の分野の幅広さと熱気に感心しました。インターゲノミクスという観点を意識したつもりが、いくつかの取り組みを一緒に離したため、お聴きになって分かりにくい点が多々あったと反省しきりですが、それぞれの話題に対して的確なご質問を頂き救われました。今後の研究の方向性や話題提供のツボを考える際の参考になるご意見を沢山頂戴し、感謝しております。今後、学会などでも是非お声掛け頂き、ご意見などお伺いできれば嬉しいです。

東山哲也 先生

発表にも質疑にも十分な時間をとっていただき、内容の濃いディスカッションができました。また、これまでとは違った角度からの質問がとても多かったことも印象的でした。お話した花粉管の誘引物質候補についての進化的な内容の質問など、今後の研究に活かしたい御指摘が多くありました。野々村さんのお話も、久しぶりにゆっくりと伺えまして、始原生殖細胞形成における細胞間シグナリングの研究など、とても面白く今後の展開も期待させられました。演者を2名にするスタイルは、とてもいいと思います。植物生殖におけるインターゲノミクス、特に細胞間シグナリング分子に関しては、幅広く最新の内容が取り上げられたと思います。今回がなぜか初めての神戸だったのですが、スタッフの皆様がたとの夜の部も含めまして、とても有意義な時間を 過ごせました。この素晴らしい研究会と、皆様のご研究が今後も益々発展されますことを祈念いたします。

(世話人:山崎将紀, 宅見薫雄)