第11回 インターゲノミクスセミナー
講演タイトルと講演者
オーム研究 ~新しい実験手法から何ができるようになり、何がわかってきたか?~
- 「日本型イネの品種ゲノミクス解析」
- 江花 薫子 先生(農業生物資源研究所)
- 「高速高感度ホルモン一斉解析の現状と可能性」
- 榊原 均 先生(理化学研究所 植物科学研究センター)
世話人より
第11回インターゲノミクスセミナーが,平成21年10月2日(金)「オーム研究 ~新しい実験手法から何ができるようになり、何がわかってきたか?~」というテーマで開催されました.近年は様々なオーム研究が聞かれますが、言葉は知っていても実際にどのような新しい実験機械等を使って、どんな原理・手法を行っているのか、どのような結果が得られ、どのように応用されているのかを知らない・わかってないことが多く、話や講演を聞く機会もあまりなかったと思います。そこで、植物の「ゲノム」と「メタボローム」の先端を走っている先生に講演を御願いしました。今後も引き続きオーム研究をされている先生を御招きしたいと考えています。
江花先生はイネ集団のDNA多型と形態形質との関連を調べる目的で研究を行っています。世界のイネ集団を用いた分類を行っている一方、DNA多型を低コストで大量に検出するため近年開発された次世代シークエンサーや高速遺伝子型決定システムを用いて、日本の水稲品種群を分析されました。大きな成果として、日本で30年以上作付け面積のトップである「コシヒカリ」の塩基配列が決定されたことです。他にも数品種の塩基配列が解読中のようです。既に解読されている「日本晴」との比較から大量の一塩基多型が検出され、この情報を元に他の品種の一塩基多型が同定されました。系譜情報を利用して、ゲノム領域の類縁関係が詳細に検出できるようになっていました。これらの情報は将来のイネ育種に役立ちそうです。
榊原先生には「メタボローム」の一種である「ホルモノーム」の御研究を紹介していただきました。先生は40種以上の植物ホルモンを一斉に定量解析するシステムを確立されました。しかも、サンプル量は数グラムあれば十分であり、多検体の分析が可能で、検出感度がフェムトモル単位と聞いて、高い技術に感心させられました。工夫は化学的修飾であることを紹介され、さらなる改良が進むことが期待されます。対象植物はアラビドプシスやイネだけではなく、様々な植物種を取り扱ったご経験があり、植物ホルモン研究に大きく貢献していることがわかりました。本講演を聞いて「このサンプルの植物ホルモンを調べて欲しい」と考えた方がいたのではないでしょうか。
講演者からのコメント
榊原 先生
今回はインターゲノミクスセミナーにお招きいただき誠にありがとうございました。教官の方から若い学生さんまで多くの皆さんに来ていただき、また、活発な議論をしていただき私自身も非常に勉強になりました。テーマを決めて2名の発表を行なうというやり方は、通常の単発のセミナーとは違い討論の幅も広がりよいアイデアだと思いました。懇親会でも若手の教官の方々と様々な意見交換ができたことを感謝しております。インターゲノミクスという限られた分野にとらわれない新しい形の勉強会が今後も発展してくことを祈っております。
(世話人:山崎将紀)
江花 先生
インターゲノミクスセミナーにお招きいただいてありがとうございました。私 たちの研究は、アピール不足もあって、あまり知られていないので、このような機会を与えていただいたことを感謝しております。日頃、同じ研究を行っているメンバーとの狭い世界で仕事をしているので、このような広い領域の研究者や学生さんとディスカッションできる機会はありません。私にもよい刺激になりました。