Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第13回 インターゲノミクスセミナー

講演タイトルと講演者

時の流れと生物のインターゲノミクス~進化を分子生物学で捉える~

「単面葉の発生進化の遺伝子基盤」
山口 貴大 先生(基礎生物学研究所)
「DNAから植物の進化に迫る -イネの栽培化過程を進化のモデルに-」
井澤 毅 先生(農業生物資源研究所)

世話人より

 第13回インターゲノミクスセミナーが平成21年10月23日(金)、農学部B401にて開催されました。今回は"時の流れと生物のインターゲノミクス~進化を分子生物学で捉える~"というテーマで植物の進化について最先端の研究を展開されている先生2名にお越し頂きました。セミナーには農学部からだけでなく、理学部・工学部・自然科学研究科、さらには他大学からも多数の参加者をお迎えして、B401が満席になるほどの盛況の開催となりました。

 地球に生命が誕生して以来、我々生物は数多くの進化を遂げ現在に至っています。分子生物学の発展により、これら進化の過程をDNAの変化という観点から考察することが可能になってきました。演者の先生方には、DNAの変化が植物の形態にどのような進化をもたらしたのか、その過程についてもご紹介頂くようにお願いしました。

 山口貴大先生は、単子葉植物の持つ「単面葉(裏側化した葉を持つ植物が繰り返し進化していること)」に着目され、葉の極性決定機構についての研究をご紹介頂きました。研究材料であるイグサ科の植物は日本各地から自身で採集され、また遺伝解析の集団や形質転換の実験系なども全て作られています。これらの材料を用いて単面葉が形成される分子レベルでの最新の結果をご紹介頂きました。

 井澤毅先生は、我々の主要作物であるイネの栽培化について研究をされています。種子脱粒性は、収量性を向上させるために栽培化の過程で改良されてきました。研究では、インディカ品種とジャポニカ品種間に見られる脱粒性の違いについて調べ、関与する遺伝子の変異を同定されています。セミナーではこれら脱粒性を支配する遺伝子の他にも栽培化関連形質の遺伝子配列解析から得られたイネの栽培化に関しての研究データを、また分子生物学者と考古学者との意見の違いについてもエピソードを交えてご紹介頂きました。

 お二人の先生方への質疑応答は非常に活発に行われ、世話人として時間の関係上、質問を制限しないといけなかった点が最も心苦しく感じました。また最後になりましたが、進化という難しいテーマ設定にも関わらず、セミナーをご快諾頂きましたお二人の演者の先生、並びにセミナーにご参加くださいました皆様に感謝いたします。

講演者からのコメント

山口貴大 先生

 私は発生進化学,しかも単面葉という,一般になじみのない材料を研究テーマとしていることもあり,研究内容を参加者の皆様に上手く伝え,理解して頂けるのかという不安がありました.しかし,参加者の皆様のご質問,ご意見は非常に的確なものばかりであるとともに,これまで気がつかなかったご指摘やアイデアを多数頂くことができ,早速自身の研究に活かすことが出来ています.これまでいくつかのセミナーをしてきましたが,参加者の皆様の知識や熱意はひときわ高かったと感じています.また,非常に幅広い分野の方々にお集まりいただき,非常に有意義な機会になりました.世話人の先生,そして参加して頂いた皆様に,もう一度感謝の意を表したいと思います.

井澤毅 先生

キャンパス内だけでなく、遠方からの参加者も何名もおられて、そのことだけでも、このインターゲノムミクス・セミナーの内外での評価の高さがすぐにわかりました。若い学生の参加も多く、今回のテーマ内容もあってか、他分野からの参加者も多くおられたように感じました。そういった方々からの、いろいろな切り口からの活発な質問に、答えるこちらもたじたじになるといった感じで、非常に有意義なセミナーで、いい経験をさせていただき、発表したこちらがかえって勉強させていただいたといっても過言ではありません。世話人の先生方には、発表の機会を与えていただき、本当にありがとうございました。また、この素晴らしい研究会が今後も益々盛況に運営されていかれることを心から祈念いたします。

(世話人:石川 亮)