Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第20回 インターゲノミクスセミナー
「進化研究と次世代シークエンサー」

講演タイトルと講演者

「「栽培化」によらない作物進化:パンコムギの起原をめぐる未解決問題と最近の研究成果」
松岡 由浩氏(福井県立大学 生物資源学部)
「次世代シークエンサーを用いたタンパク結合部位解析技術(ChIP-seq法)による網羅的ゲノム解析技術の開発とその実際」
中戸 隆一郎氏(東京大学 分子細胞生物学研究所)

世話人より

 第20回インターゲノミクスセミナーが、平成24年10月5日(金)「進化研究と次世代シークエンサー」というテーマで開催されました。今回は現在流行の次世代シークエンサーと植物進化の話題提供を考えました。一見繋がりが薄いようにみえますが、おそらく進化研究に次世代シークエンサーの技術が積極的に導入され、新たな知見や展開が見えてくるでしょう。そのために最新の話題に少しでも触れておく必要があります。

 松岡先生は、パンコムギを中心に進化研究をすすめられています。まず植物に特異な倍数性と、パンコムギも該当する倍数性進化の話を丁寧に説明されました。パンコムギの六倍性の経緯や原因を探るために、野外調査や交配実験を精力的にこなされ、わかりやすい写真やスライドを使って、参加した学生にもわかりやすかったと思います。最後に倍数性進化に寄与する非還元配偶子や関連する遺伝解析は非常に興味深く、パンコムギの倍数性進化の解明へ発展されると期待できます

 中戸先生には,次世代シークエンサーを用いた網羅的ゲノム解析について,ご講演いただきました。使用目的に応じた機種の選定などの基本的なところから,現在中戸先生がされているコヒーシンタンパク質のゲノム局在部位と転写制御に関する研究のお話まで,素人でも分かるように,また関連分野の研究者の興味も惹くように,実に中身のある内容を丁寧に説明いただきました。神戸大においても近々次世代シークエンサーが共用機器として利用可能となるので,今後新たに次世代シークエンサーを使用して研究を進めていきたいと考える教員や学生にとっては,現在の網羅的ゲノム解析が抱える解析上の問題点や気をつけるべき事柄などがわかり,非常に有意義なセミナーであったと思います。

講演者からのコメント

松岡 先生

 セミナーでは、パンコムギの進化について、その研究の歴史を振り返りながら、未解決問題を整理し、それらに関する近年の研究成果を解説しました。素晴らしい聴衆の皆様に恵まれ、大変楽しくお話しさせて頂くことが出来ました。導入部に少し時間をかけ過ぎ、後半、やや時間不足気味になってしまいました点、申し訳なく思っております。また機会がありましたら、是非またお声掛け頂き、話の続きをさせて頂ければと思っております。今回のセミナーを通じて、パンコムギ進化の面白さと栽培植物の研究材料としての魅力を、少しでもお伝えできたとしたら、望外の喜びです。

中戸 先生

 この度はインターゲノミクスセミナーにお招きいただき、有難うございました。
 私の専門である計算機を用いた解析手法は皆様の研究からは少し遠いかと思いますので、皆様にとって有益な発表となるだろうかと心配しておりましたが、発表を大変熱心に聞いて頂くことができ、また沢山の質問やディスカッションをいただき、私にとっても大変意義深い時間を得ることができました。お集まりいただいた皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げます。
 次世代シーケンサを用いた解析も近年ずいぶん普及して参りましたが、実際の解析の現場にはまだまだ困難な点があることや、それらをクリアすることでどういった知見が得られるかなど、皆様のご研究に少しでもお役に立てれば幸いです。
 最後になりましたが、今後のインターゲノミクス研究会の益々の御発展を祈念しております。

(世話人:山崎将紀・李 智博)