Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第21回 インターゲノミクスセミナー
「植物生理学・研究最前線」

講演タイトルと講演者

「プラスチド局在型ピルビン酸輸送体の同定」
古本 強氏(龍谷大学 文学部 農業研究所)
「シロイヌナズナを用いた植物免疫応答MAPキナーゼ経路の解析」
市村 和也氏(香川大学大学院 農学研究科)

世話人より

 第21回インターゲノミクスセミナーが11月 2日(金)15時10分より農学部B401で行われました.今回はセミナーのタイトルが「植物生理学・研究最前線」ということで,最近活躍が目覚ましい古本先生,市村先生の2人に最新の研究成果について講演していただきました.参加者も多く活発な議論が行われ,大変有意義な会となりました.

 まず古本先生はピルビン酸輸送体の同定に関する講演でした.C4植物において特に重要と考えられるピルビン酸輸送体を同じフラベリア属のC3種とC4種をディファレンシャルスクリーニングで比較することにより探索しました.困難なのは輸送体の活性測定で,大腸菌などに輸送体を発現させシリコン膜を遠心機を使って通過させて,その移動中に物質を輸送する活性を測るという非常にテクニカルな方法でした.ほかにも維管束鞘細胞と葉肉細胞をカタツムリの酵素を使って溶かし出して精製するなど,現在難しくて行われていないが,過去に確立され,現在忘れられていきつつあるテクニックをいくつか使われて,大きな成果を出されていました.また,研究がうまくいかない時の苦労話,実験ノートを披露いただき,特に若い学生さんにはいい刺激になったのではないかと思います.

 市村先生は植物がもつ環境ストレス応答メカニズムの解明を目指して精力的に研究されています。本講演ではその中でも動物の獲得免疫系のような生体防御に特化した細胞を持たない植物が、如何にして病原体を認識し防御しているかという植物がもつ自然免疫能の分子メカニズムについて最近の研究成果を大変分かり易く説明いただきました。植物は病原菌由来の物質をパターン認識受容体(レセプター様キナーゼ)が認識することで防御応答することが知られていますが、このパターン認識受容体は植物ゲノムにおいて数多くの(シロイヌナズナでは600を超える)相同遺伝子があり、そのうちの大部分は機能未知です。今後これらの機能解明を通した植物免疫システムの解明を目指す研究はますます盛んになると思われます。

(世話人:深山 浩・松岡大介)