Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第27回 インターゲノミクスセミナー
「光合成の進化~分子レベルの進化から見えてきたもの~」

講演タイトルと講演者

「光合成CO2固定酵素RuBisCOの機能進化を探る」
蘆田弘樹氏(神戸大学大学院 人間発達環境学研究科)
「葉緑体酸素発生系タンパク質の分子進化と機能分化」
伊福健太郎氏(京都大学大学院 生命科学研究科/JSTさきがけ)

世話人より

第27回インターゲノミクスセミナーが12月 6日(金)15時10分より農学部C101で行われました.今回はセミナーのタイトルが「光合成の進化?分子レベルの進化から見えてきたもの?」ということで,炭素代謝の分野から蘆田先生,光化学系の分野から伊福先生をお呼びして,最新の研究成果について講演していただきました.参加者も多く活発な議論が行われ,大変有意義な会となりました.

 まず,蘆田先生は光合成におけるCO2固定の初発反応を触媒するRuBisCOの進化的な研究のお話を中心にしていただきました.RuBisCOの酵素特性は生物種により多様に進化しており,紅藻ガルデリアはとてもCO2親和・ォの高いRubiscoを持っている.紅藻タイプのアミノ酸配列の変異をラン藻に導入すると,ラン藻RubiscoのCO2特異性が向上することを示され,今後の植物への応用も期待できると考えられました.また,高温耐性のシアノバクテリアの研究からRbcSが高温耐性の獲得において重要な役割を担っていることなど,興味深いお話をしていただきました.その他,ラン藻を用いたバイオエタノール生産,Rubisco like protein,カルビンサイクルの進化のお話など,盛りだくさんな内容でした.分野外の方でも理解できるようにわかりやすく解説いただき,質疑においても活発な議論が行われました.

 続いて伊福先生による光化学系タンパク質、特に光化学系IIの表在性タンパク質の機能と進化に関する研究のお話をしていただきました。酸素発生型光合成生物において、光化学系IIのマンガンクラスターを保持に機能していると考えられる3種類の表在性タンパク質は進化にともなう遺伝子重複を経てタンパク質ファミリーを形成しており、いくつかの表在性タンパク質は光ストレス下での光化学系活性の安定化に寄与していて、これは水中から地表面での生育に適応するために高等植物が進化の過程で獲得したことを裏付けているという可能性を示されました。また植物の光合成機構をもとに新規な人工光合成に応用しようというチャレンジングなお話をしていただきました。光化学系の研究分野は、分子生物学、生化学、物理化学等、幅広い学問分野にまたがっておりややもすれば理解が難しい講演になりがちなのですが、伊福先生は分かりやすい講演を心がけて下さり、分野外の聴衆にとっても興味深い講演になりました。

(世話人:山内靖雄・深山浩)