Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第28回 インターゲノミクスセミナー
「攻めるもの、守るもの、潜むもの -病原体と宿主免疫-」

講演タイトルと講演者

「C型肝炎ウイルスの複製と病原性に関わる宿主タンパク質の解析」
岡本徹氏(大阪大学微生物病研究所 分子ウイルス分野)
「宿主自然免疫系による寄生虫「トキソプラズマ」の排除機構とその破綻のメカニズム」
山本雅裕氏(大阪大学微生物病研究所 感染病態分野)

世話人より

第28回インターゲノミクスセミナーが、平成26年4月18日(金)15時30分より農学部B101で行われました。今回のテーマは「攻めるもの、守るもの、潜むもの -病原体と宿主免疫-」ということで、大阪大学微生物病研究所からC型肝炎ウイルス(HCV)の複製や病原性に関わる宿主因子の研究をされている岡本先生と、寄生虫「トキソプラズマ」と、自然免疫 の相互作用について 研究をされている山本先生のお二方に、「病原体」と「宿主」の攻防について講演して頂きました。新年度早々の多忙な時期の開催にもかかわらず、多くの方に参加して頂き、活発な議論が行われ,大変有意義な会となりました。

 岡本先生には、まず、HCV治療の現状について紹介して頂きました。日本では血液スクリーニング等が徹底されているため、HCVの新たな感染者はほとんど報告されていませんが、アジア諸国では毎年感染の報告があります。 HCVはヒトに慢性感染し、2型糖尿病、脂肪肝、そして、肝細胞癌を誘導します。現在、主流であるHCV治療法としてインターフェロンとリバビリンの併用療法がありますが、HCV感染患者の50%にしか効果がありません。DAA(Direct acting Antiviral)を用いる方法もありますが、副作用が酷く、非常に高価であり、また耐性ウイルスの出現もあるなど、問題が多くあります。さらに、ウイルスの排除に成功しても肝癌を発症してしまう場合もあります。先生はHCVの感染、慢性化と病原性の発現についてのメカニズムについて、HCVの構造タンパク質であるコアタンパク質に注目した研究を行っておられます。今回は、コアタンパク質の分解や、成熟に関わる宿主因子の解析を用いた、病原性発現の分子メカニズム解明へのアプローチや、そこから新たな治療薬開発の可能性について紹介して頂きました。

 次に、山本先生には、偏性寄生性原虫であるトキソプラズマと宿主生物の自然免疫について、基本的な免疫学の紹介も交えて講演して頂きました。トキソプラズマはマラリア原虫など、他の原虫とは異なり、一種類しか存在しないにもかかわらず、宿主特異性が非常に低く、様々なほ乳動物に感染することができます。一般にヒトへの感染経路は、トキソプラズマに感染したネコの糞便で汚染された生野菜や、感染家畜の生肉の摂食による経口感染と考えられています。しかし、健常者の場合は感染しても、トキソプラズマは免疫系で排除されるか、もしくは休眠状態のまま目覚める事はありません。一方で、感染者がAIDSなどのある種の免疫抑制状態の場合、トキソプラズマ脳症等の感染症を引き起こします。先生は、トキソプラズマがどのように宿主免疫系から逃れるか、また逆に免疫系がどのようにトキソプラズマを排除するのか、病原体と宿主両方向から研究を行っておられ、今回、その成果の一部を紹介して頂きました。

講演者からのコメント

岡本 先生

 先日はIGセミナーで発表させて頂ける機会を頂き、ありがとうございました。肝炎ウイルスというあまり関係のないような話だったのにも関わらず、多くの学生さんやスタッフの方に聞いて頂き、そして様々なアドバイスをして下さり、とても勉強になりました。少しでも、私たちが進めている研究を知って頂ければ幸いです。また、懇親会では多岐に渡る話をすることができ、とても楽しく有意義な時間を過ごすことができました。大学同士、近いですので、今後ともよろしくお願い致します。

山本 先生

 昨日のセミナーでは大変お世話になりました。 また、夜の飲み会もご馳走様でした。同年代の同業者の方と話せて、とても楽しかったです。

(世話人:松尾栄子)