Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第29回 インターゲノミクスセミナー
「脳科学研究最前線!~グリア充と神経サーキットの漢からのいざない」

講演タイトルと講演者

「脳機能を制御する新しい役者・グリア細胞」
小泉修一氏(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
「遺伝学的手法で解き明かされるショウジョウバエ味覚神経回路」
宮崎隆明氏(米NIH 小児保健発達研究所(NICHD))

世話人より

 第29回インターゲノミクスセミナーが、平成26年6月9日16時に農学部B401にて行われました。今回のセミナーのテーマは神経回路についてであり、山梨大学から小泉修一先生、米・国立衛生研究所から宮崎隆明先生をお招きしてご講演いただきました。インターゲノミクス研究会では一部の研究者を除き、神経については全くの素人が多いので、小泉先生には、神経細胞やシグナルの伝達様式について初歩的なところから説明していただき、以前は何をしているかよくわからなかったグリア細胞が脳の情報発信と処理に関わるものと認められるようになってきたことを紹介していただきました。また、元々の痛みの原因が無くなっても治らない慢性疼痛の話なども個人的に大変興味深く聞かせていただきました。宮崎先生には神経回路を“視る”ということについて、トランスジェニック技術を用いた手法の丁寧な説明も含めながら、ハエの味覚神経の研究をご紹介いただきました。動物個体を“生きたまま”観察する方法は、生体に導入する蛍光分子などのツール、または顕微鏡というハードな部分の両方の技術開発から、近年急速に進歩しています。その真っ只中の最新技術を用いた神経の研究の内容は、非常に興味深いものでした。

講演者からのコメント

小泉 先生

 このたびは、インターゲノミクス研究会にお招きいただき有難うございました。グリアのお話を、特にアストロサイトの新しい役割に焦点を当ててお話いたしましたが、雑駁とした話になってしまったかもしれません。まだまだ話し足りないことが多かったのですが、先ずは「グリア」が皆さんの記憶に少しでも残っていただければ幸いであります。若い先生方、学生さんが、分野の垣根を越えて、自由活発に議論している様子が、うらやましくまた頼もしく思えました。どうぞこのような良い会を、末永く続けていただき、またどんどん発展させていただければと思います。また、帰国中の宮崎先生の強烈なお話もお聞きできて、嬉しかったです。さらに、世話人の李先生とは15年以上を経ての再会でしたので、これもまた、とても嬉しい出来事でした。本当にお世話になりました。また、新しいこと見つけたら呼んでください。

宮崎 先生

 この度はインターゲノミクスセミナーでお話しする機会をくださり、どうもありがとうございました。当日は暑い中皆さんご出席くださり光栄でした。今回は神経科学がテーマでしたが、先にお話しになった小泉先生は、グリア細胞の基本的な事柄から説き起こして疾患などへの関わりまで、コーヒーブレイク的な部分も含めて分かりやすく説明してくださり、たいへん刺戟を受けました。その後の私の話は単一のプロジェクトに関する解説で、映写した教材が英語のものだったこともあり、学生の方々の興味をうまく惹けたか分かりませんが、キイロショウ ジョウバエをモデルとした神経回路の研究の一端をご紹介できたのではないかと思います。ゲノミクスと神経回路というとあまり接点のない分野同士のように思われることも多いと思いますが、異なる分野の研究者が交流する中から研究のアイディアやテクニックをよりよく生かせる機会が生まれてくると思いますから、このような機会は大変重要だと思います。その意味で、今回のセミナーのあとの懇親会は楽しかったのはもちろんですが、学部や研究機関の枠を超えて多様な方が参加されて、有意義だったと思います。

(世話人:李智博・藍原祥子)