Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第36回インターゲノミクスセミナー
「ゲノミクスと生化学の融合が展開する食品研究」

講演タイトルと講演者

「動脈硬化性疾患におけるHDL代謝経路の遺伝子変異」
谷 真理子 先生(東京医科歯科大学 血管代謝探索講座)
「遺伝子破壊法を用いたビフィズス菌の機能ゲノミクス」
鈴木 徹 先生(岐阜大学 応用生物科学部)

世話人より

 第36回インターゲノミクスセミナーが平成28年1月29日15時に農学部B101にて行われました。今回のセミナーのテーマは「ゲノミクスと生化学の融合が展開する食品研究」とし、東京医科歯科大学から谷 真理子先生、岐阜大学から鈴木 徹先生をお招きしてご講演いただきました。

 谷先生には、遺伝子診断の対象ともされている動脈硬化性疾患についてメカニズムから丁寧に解説していただき、血液中の脂質のなかでもリポタンパク質に対する最新の研究について紹介していただきました。新しい技法を用いた生化学的な解析と、ゲノミクスを利用したin silicoな解析が綺麗にリンクした研究例は、ゲノミクスの応用性の広さを感じさせるものでした。

 鈴木先生には、プロバイオティクスとして注目されるビフィズス菌について、Bifidobacterium adolescentisの全ゲノム配列の解析をスタートとしてその機能の解析を目指して逆遺伝学的なアプローチのための遺伝子操作法の確立までご講演いただきました。ビフィズス菌はお腹に良いとされていながらも、そのメカニズムは実は近年になってようやく分かってきたこともご紹介いただきました。ヒトの共生細菌そして食品(プロバイオティクス)としても魅力あるビフィズス菌のインターゲノミクスについて、研究手法の確立からメカニズム解明に至るまで興味深く拝聴いたしました。

講演者からのコメント

谷 先生

 この度は、インターゲノミクス研究会で発表する機会を与えて頂き、どうもありがとうございました。HDLを二次元電気泳動で分離することで遺伝子疾患を同定できることや、ゲノミクスが明らかにする将来の治療・創薬ターゲットの可能性など、「インターゲノミクス」よりはかなりマクロな話をさせて頂いたのですが、少しでも興味を持っていただけたら嬉しく思います。鈴木先生の乳酸菌についての御講演も大変興味深く、気の遠くなるような地道な研究成果に大変感銘を受けました。異分野の先生方、特に同世代の先生方と、研究の話や、これからの大学について話し合うことができて大変有意義な時間でした。この研究会が、今後ますます分野や大学を超えて、新しいアイディアが生まれる地盤になりますよう期待しています。

鈴木 先生

 神戸大学におけるインターゲノミクス研究会にお招きいただきありがとうございました。私たちの研究グループは、一つ一つの研究テーマを大学院生や学部学生が手作りで築き上げてきたものです。多くの方々に聞いていただき本当に感謝します。時間の都合と私の話力の限界で、学生たちの苦労が伝わっていなかったことを若干、反省しております。これからヒトとビフィズス菌のインターラクションの研究に発展させていこうと考えているおり、谷先生のお話も大変興味深く、拝聴させていただきました。こういった出会いの中から新しい共同研究が生まれていくことを期待します。

(世話人:藍原 祥子、福田 伊津子)