Intergenomics Seminarセミナーと勉強会

第42回インターゲノミクスセミナー
「ウイルス四方山:我が道を行くウイルス達―悪いヤツ?良いヤツ?どうでも良いヤツ?―」

講演タイトルと講演者

「Borna disease virus vector for gene delivery: current status and future potential」
小松 弓子 先生(京都大学ウイルス・再生医科学研究所)
「危険なウイルス(やつら)をプロファイリングする:殺人ウイルスの条件」
海老原 秀喜 先生(米・メイヨークリニック・Department of Molecular Medicine)

世話人より

第42回インターゲノミクスセミナーが、平成29年 10月27日(金)15時10分より農学部B204で行われました。今回のテーマは「ウイルス四方山:我が道を行くウイルス達―悪いヤツ?良いヤツ?どうでも良いヤツ?―」ということで、米国メイヨークリニックからエボラウイルスなど高い致死率を伴う出血熱を引き起こすウイルスの病原性発現メカニズムについて研究をされている海老原先生と、京都大学ウイルス・再生医科学研究所から-鎖RNAウイルスであるボルナウイルスの複製やgene deliveryベクターとしての可能性について研究されている小松先生のお二方に、ウイルスの「悪い面」と「良い面」ついて講演して頂きました。学会シーズンの開催にもかかわらず、多くの方に参加して頂き、活発な議論が行われ,大変有意義な会となりました。

まず、小松先生にウイルスの良い面として、遺伝子治療等を目的として外来遺伝子を感染した宿主内で発現させるウイルスベクターとしての可能性について紹介して頂きました。ボルナウイルスは、ウイルス研究家以外には名前を知らないマイナーウイルスですが、最近になってレトロウイルスのように「生物の中に内在している」ことが発見され、レトロウイルスやアデノウイルス等と同じように遺伝子治療等のツールとして利用しようという試みが始まっています。先生には、ボルナウイルスの基本的な情報から最新のボルナウイルス事情までを紹介して頂きました。

次に、海老原先生にウイルスの悪い面として、エボラウイルスを題材として、怖いウイルスとは何ぞや」について概説して頂きました。また、現在行っている「何故(ある株の)エボラウイルスは致死的なのか」という根本的な疑問の分子レベルでの解明を目指した研究について紹介して頂きました。

講演者からのコメント

小松 先生

インターゲノミクスセミナーでは、ボルナウイルスベクターの開発と利用について発表させていただきました。多くの人は、ウイルスといったら怖いイメージを持っていると思いますが、本セミナーにおいてウイルスも使いようによっては有効利用ができる事を知っていただくことができたと思います。研究の対象がウイルス以外の方々にも興味を持っていただくことができたようで、セミナー後も若手の研究者の方々と活発な議論ができ、有意義な時間を過ごすことができました。とても楽しかったです。ありがとうございました。

海老原 先生

この度は、インターゲノミクスセミナーで我々のラボが行っている研究を紹介する機会を与えていただき、ありがとうございました。分野を超えた活発な議論をセミナーに参加頂いた多くの先生方、学生さんたちとできたことは、私にとっても、今後、研究を進めていく上で、とても刺激になる貴重な経験でした。今回、「ウイルス四方山」のテーマで、私の話したお題は、キワモノの極悪ウイルス担当でしたが、「どのようにウイルスがヒトに病気を起こすのか」という問いは、いわゆる古典的ウイルス学の普遍的な研究テーマです。私は、この”クラシック”ウイルス学が、様々な研究分野の技術や視点を取り入れて、現在、新しいステージに向かっていると思っています。本セミナーシリーズの主旨の1つである「分野の垣根を超えた議論」を通じて、セミナーに参加頂いた皆様に、この古くて新しいウイルス病原性学研究の醍醐味を知ってもらい、この分野により興味を持っていただければと思います。

(世話人:松尾 栄子)