2021年3月24日 プレスリリース

ArCS II国際法制度課題からブリーフィングペーパー・シリーズが発刊されました!
第1号と第2号は、今話題の北極域の海洋プラスチック問題を扱っています。

ブリーフィングペーパー・シリーズArCS IIでは、研究成果の「社会実装」が求められています。国際法制度課題では、そうした要請に応える1つの方策として、「ブリーフィングペーパー・シリーズ」を発刊することになりました。今回、その第1号(英文)と第2号(和文)として、「北極域の海洋プラスチック問題:国際法と海洋科学の共同研究の必要性」が公表されました。

ブリーフィングペーパー・シリーズ (BPS)は、ArCS IIの下で国際法制度課題が他の課題とも連携しながら進めている北極に関する研究成果を広く社会に還元し、関係ステークホールダーが関心を寄せる課題につき、国際法政策的視点から簡潔平易に解説する文書です。BPSは以下の3つのカテゴリーにて、日本語ないし英語で発刊されます。ポリシーブリーフ(Policy Brief)は、日本及び関係各国の北極政策立案実施に資するような情報、政策オプションなどを提示するものです。ファクトシート(Fact Sheet)は、日本及び国際社会のステークホールダーが関心を寄せる北極国際法政策的課題に関わる事実関係や関係国際法制度の現状を正確にまとめたものです。リサーチブリーフ(Research Brief)は、国際法制度課題の下での研究内容ないしその成果を一般向けに概説したものです。


今回公表された「北極域の海洋プラスチック問題:国際法と海洋科学の共同研究の必要性」第1号と第2号は、ファクトシートです(画像をリンクするとPDFがダウンロードできます)。

2021年3月上旬に、アイスランド政府主催で 北極プラスチック問題の国際シンポジウム が開催されました。また、アイスランドが議長国を務めて5月に開催される 北極評議会(Arctic Council)第12回閣僚会議 でも、プラスチック問題への対処は、今後の北極域の持続可能な発展を実現する上で、北極圏国、日本を含む非北極圏国がより強固に協力していくべき課題として議論される予定です。そのような国際的議論に貢献しうるファクトシートが、ArCS IIの国際法制度課題(PI:神戸大学・柴田明穂)と海洋課題(PI:JAMSTEC・渡邊英嗣)の共同研究の成果として、このタイミングで日英両言語で公表されたことは、社会的にも大きな意義があります。

このファクトシートのポイントは、以下の3点です。

  1. このファクトシートでは、特にマイクロプラスチックに着目して論じます。最近の科学研究により、海洋環境において濃度も蓄積量も増え続けているマイクロプラスチックは海洋生態系に対して潜在的に悪影響をもたらしうること、そして北極の海が、海に放出されている世界中のプラスチックが海流に流されて蓄積しやすい海洋プラスチック汚染の「ホットスポット」の1つになりつつあることが、明らかになってきています。
  2. そのような科学的な研究成果を踏まえた、北極域の海洋プラスチック問題に対応するための国際法政策研究が必要です。海洋プラスチック汚染に関する今日の課題に包括的に応える国際法的文書はまだありません。そこで、このファクトシートでは、北極域おける海洋プラスチック汚染への対策として、将来の法的ガバナンスを設計するために役に立つであろう、国際法的文書や概念、ツールや先例を明らかにします。
  3. このファクトシートは、2020年11月に開催された第13回極域法国際シンポジウムでの学術発表に基づいており、またその後の北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)の国際法制度課題と海洋課題との共同研究及び笹川平和財団海洋政策研究所との共同研究を通じて、さらに発展させたものです。

著者紹介:

阿部 紀恵(あべ きえ)

神戸大学極域協力研究センター(PCRC)・上級研究員/ArCS II国際法制度課題研究分担者(2020年11月〜2021年2月)。法学博士(京都大学2020年)。研究関心は、国際法の法源論及び国際環境法。

セイタ・ロンパネン(Seita Romppanen)

イースターンフィンランド大学 気候変動・エネルギー・環境法センター(CCEEL)・上級講師(国際環境法)。研究関心は、気候変動及び環境に関するEU法。

豊島 淳子(とよしま じゅんこ)

笹川平和財団海洋政策研究所・研究員。主な研究分野は、沿岸生態系管理、生物多様性保全、ブルー・エコノミー、海洋プラスチック汚染、北極研究。ArCS II海洋課題研究協力者。

柴田 明穂(しばた あきほ)

神戸大学・教授(国際法)、極域協力研究センター(PCRC)センター長。ArCS II国際法制度課題研究代表。



<関連情報>
第13回極域法国際シンポジウム公式HP
< https://2020polarlawsymposium.org >
ArCS II国際法制度課題及び海洋課題
<https://www.nipr.ac.jp/arcs2/goals/subject04-01/ >
<https://www.nipr.ac.jp/arcs2/goals/subject01-02/ >