2022年2月21日 プレスリリース

ArCS II国際法制度課題からブリーフィングペーパー・シリーズ第5号「台湾の最近の北極への関心:台湾海洋委員会機関誌『国際海洋情報』を中心に」(ファクトシート)が発行されました。

ブリーフィングペーパー・シリーズ
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国際法制度課題がArCS Ⅱにおける研究成果を広く社会に還元することを目的として発行している「ブリーフィングペーパー・シリーズ」(BPS)において、第5号「台湾の最近の北極への関心:台湾海洋委員会機関誌『国際海洋情報』を中心に」(ファクトシート)が発行されました。

第5号では、台湾海洋委員会が発行する機関誌『国際海洋情報』に掲載された台湾初となる北極域での観測に関する記事を紹介しつつ、台湾におけるこれまでの北極域研究の現状、台湾が北極域研究へと乗り出した背景や関係する政府組織、今後の台湾の北極域政策に対する日本の影響等を分析しています。

このファクトシートは、2021年12月発刊の『国際海洋情報』第15号に掲載された「気候危機の中の北極海洋研究」という記事を紹介しています。この記事によると、台湾国家海洋研究院、台湾国立中央大学、ポーランドのコペルニクス大学の3つの研究機関が、2021年8月、スヴァールバル諸島の観測基地において地上観測実験や北極海での観測データを収集するなどの共同研究を行い、氷床の地震波測量と独自開発の小型観測ブイの動作確認を行ったとされており、「台湾チーム」として台湾の研究者が北極域で観測活動を行うのは、この観測が初めてであるとされます。

続いて、これらの台湾による北極域観測をけん引した台湾海洋委員会およびそのシンクタンクである国家海洋研究院について、その設立の経緯と組織体制について解説しています。台湾海洋委員会は、今後の海洋政策を策定するにあたって、日本のこれまでの北極域への関与の仕方から多くを学ぼうとしており、最近の報告書では、日本が北極域における経済的課題と環境研究を重視し、科学的研究を追求することによって北極評議会のオブザーバー資格を得たことが指摘されているとのことです。

そして、台湾は今後も、台湾海洋委員会と国家海洋研究院を中心として北極域研究に関心を示しており、海洋委員会が発行する機関誌である『国際海洋情報』は、これからの台湾の北極政策の形成または北極科学研究の成果について情報を入手する重要な情報源となると分析しています。

著者紹介:

林 秀鳳(りん しゅうほう)

神戸大学大学院 国際協力研究科 極域協力研究センター(PCRC)学術研究員(2021年11月〜2022年2月)。2021年3月、同志社大学大学院法学研究科博士後期課程公法学専攻修了 博士(法学)。2015年7月、台湾政治大学外交学部・外交研究科修士課程修了、2016年9月より台湾政府国費留学生として来日。現在の研究関心は、海洋法及び極域法。



<関連情報>
海洋委員会発行『国際海洋情報』には、以下のリンクからアクセスできます。
 < https://www.oac.gov.tw/ch/home.jsp?id=55&parentpath=0,5>
■ ArCS II国際法制度課題ブリーフィングペーパー・シリーズ
 < https://www.research.kobe-u.ac.jp/gsics-pcrc/ja/arctic/press_release/j_briefing_papers.html>