講義・セミナー

重点研究チーム「蛋白質のシグナル伝達機能研究」学術講演会のお知らせ

以下のセミナーを開催いたします。

日 時 : 2008年12月 2日(火) 午後 3時~ 4時30分
場 所 : 神戸大学・遺伝子実験センター 5階 研修室
講 師 : 鐘巻 将人 博士(大阪大学大学院理学研究科・生物科学専攻)
演 題 : 出芽酵母からヒト培養細胞まで使用可能なデグロンシステムによるタンパク質発現制御法

講演要旨

 細胞内においてタンパク質の機能解析をおこなう際、その目的タンパク質の発現を抑制することで引き起こされる現象を観察することは非常に有効な研究手法であり、そのために様々な手法が用いられてきた。しかしながら、動物培養細胞レベルでごく短時間に効率よく特定タンパク質の発現抑制をおこなう汎用性の高い手法というのはまだ開発されていない。
 酵母(出芽酵母や分裂酵母)など温度適応性の高い生物種においては、これまで温度感受性変異株の作成が広くおこなわれてきた。しかしながら、ランダム変異導入による変異株の作成にはかなりの労力と時間が必要とされる。そこで高温下で不安定化するtsデグロンタグを導入することにより温度感受性変異株を作成する方法が開発された。私はこれまで出芽酵母を材料として2003年当時機能未知の必須タンパク質およそ200すべてに対するtsデグロン温度感受性変異株を網羅的に作製し、その中から複製因子GINSを含む複数の細胞周期関連因子の同定を行った(Kanemaki et al. Nature 423, 720-724, 2003)。このtsデグロン法は温度変化を引き金として短時間に特異的にタンパク質分解を引き起こすことを可能とした優れた方法であり、原理的には培養細胞を含む他の真核生物にも応用できるはずである。しかしながら実際には培養細胞の温度変化に対する脆弱性からこの方法が酵母以外の生物で用いられることは無かった。
 そこで植物細胞がオーキシン応答に伴って特定のタンパク質を速やかに分解することに着目し、この分解系を他の生物に移植することで標的タンパク質をオーキシン依存的に分解するシステムを新たに開発した。このオーキシン誘導デグロン(auxin inducible degron; AID)は出芽酵母だけでなく動物培養細胞でも機能することが確かめられた。本手法の開発と利用例および今後の展望を含めて紹介する。

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