講義・セミナー

重点研究チーム「蛋白質のシグナル伝達機能研究」学術講演会のお知らせ

以下のセミナー(2件)を開催いたします。

日 時 : 2009年 5月15日(金) 午後 3時~ 4時30分
場 所 : 神戸大学・遺伝子実験センター 5階 研修室
講 師 : 浦野 健 博士(島根大学医学部・教授)
演 題 : 細胞周期を制御する分裂期キナーゼAurora -細胞周期の基礎と紡錘体制御について-

講演要旨

 ショウジョウバエや酵母において中心体成熟および染色体分離の調節タンパク質として同定されたプロテインキナ−ゼAuroraのヒトホモローグは現在,Aurora-A, -Bおよび-Cの3種類存在し,互いに非常に類似した一次構造を有している。
 ヒトAurora-Aは,様々ながん細胞においてDNA増幅や蛋白質の発現増強が認められており,また造腫瘍能を有することも明らかとなった。局在は中心体および近傍の紡錘体であり,中心体の成熟,染色体分配および紡錘体の制御を行っている。一方,ヒトAurora-Bは染色体上に存在し分裂後期になるとミッドゾーンへと移行する染色体パッセンジャータンパク質である。機能面では染色体凝縮に関与するヒストンH3の細胞分裂期キナーゼであり,動原体の機能制御や細胞質分裂に必須であることが報告されている。ヒトAurora-CもAurora-Bと同様に染色体パッセンジャータンパク質であるが、遺伝子改変マウスの解析からさらに精子形成において重要であることが示された。
 ヒトAurora familyが細胞周期、特に分裂期をどのように制御しているのか?最近同定したAuroraファミリーの新規基質、微小管プラス端集積因子(+TIPs)に属するEBファミリーのホモログのひとつであるEB3のAurora-AおよびBによるリン酸化の意義など最近の知見も交え、お話ししたい。

日 時 : 2009年 5月15日(金) 午後 4時30分~ 6時
場 所 : 神戸大学・遺伝子実験センター 5階 研修室
講 師 : 斉藤 寿仁 博士(熊本大学大学院自然科学研究科・教授)
演 題 : SUMO修飾によるエピゲノムと細胞シグナリングの制御

講演要旨

 SUMO修飾は、ユビキチン修飾に類似の酵素反応群によって、タンパク質にSUMO分子が架橋することで標的タンパク質の機能を制御する修飾反応で、酵母から線虫、昆虫、脊椎動物、植物まで真核生物で高度に保存されている。動物細胞においては、核オルガネラを中心にその修飾活性や修飾基質が多く検出されている。我々の研究グループでは、in vitro再構成系、E. coli SUMO化、動物培養細胞やメダカ初期胚といったマルチスケールの実験操作システムを用い、SUMO修飾システムの制御とこの修飾が関わるシグナリングの生理的な意義を解析している。
 本講演では、はじめに、エピゲノム情報の伝達と維持、タンパク質の品質管理と分配、脊椎動物の初期発生といった現象におけるSUMO修飾の役割について、他のグループからの報告例もふまえ概観し、次に、我々が行っている研究の中から、SUMO修飾とクロマチン・核内構造体の動態制御に関する最近の研究成果を報告する。現在、DNA/ヒストンのメチル化修飾制御因子(MBD1, SETDB1, MCAF1など)のSUMO化による分子間相互作用ネットワークの形成機序、あるいはSUMO化タンパク質を認識するRING型ユビキチンリガーゼRNF4を介したSUMO修飾システムとユビキチン・プロテアソーム系とのリンクについての知見が蓄積しつつあるので、これらの実験結果については詳細に解説したい。

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