講義・セミナー

特別講義のお知らせ(理学部・理学研究科)

特別講義「生命情報伝達I」

日 時 : 2010年 5月 6日(木) 午前10時〜
場 所 : 神戸大学・瀧川記念学術交流会館・2階大会議室
講 師 : 胡桃坂仁志 博士(早稲田大学理工学術院 先進理工学部・研究科・教授)
演 題 : 相同組換えの分子機構

授業のテーマ

相同組換えは、ほぼすべての生物種において保存されている、必須の生命反応であり、減数分裂期での遺伝的組換えと体細胞分裂期でのDNAの二重鎖切断修復において中心的な役割を果たしている。遺伝的組換えは、減数分裂に必須である染色体間でのキアズマ形成に重要である。そのため減数分裂期での相同組換えの欠損は、染色体の倍数異常や不妊症の原因ともなる。また、紫外線や放射線などの環境要因や、細胞代謝の副産物である活性酸素や複製時のエラーなどの細胞内要因によって、ゲノムDNAは日常的にさまざまな損傷を受けている。中でも、二重鎖切断は重篤なDNA損傷であり、電離放射線やDNA複製の停止などによって引き起こされることが知られている。近年、二重鎖切断損傷は、相同組換えによって正確に修復されることが明らかになってきた。そのため、二重鎖切断修復の欠損は、欠失、転座などのさまざまな染色体異常を引き起こす直接的な要因となる。実際に、このような正確な二重鎖切断修復欠損による染色体異常は、癌細胞において頻繁に見られており、発癌および癌細胞の悪性化の原因となると考えられている。このような背景から、相同組換えの分子機構の解明は、染色体異常や不妊症、発癌や癌の悪性化などのメカニズムを理解する上で非常に重要であることが分かる。本講義では、相同組換えの分子機構について概説し、最新の知見を含めて議論する。

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