講義・セミナー

特別講義のお知らせ(理学研究科)

特別講義「現代の生物学」

日 時 : 2014年 6月20日(金) 午後1時20分〜
場 所 : 神戸大学・理学研究科C棟 Z201、Z202多目的室
講 師 : 木村 圭志 博士(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
演 題 : 細胞分裂のバイオロジー

授業のテーマ

 生物が無生物と最も異なっている点は、増殖して自分と同じ形をした生命体を生み出す能力を持っていることです。そのためには、生物の基礎単位である細胞を増殖させていかなければなりません。
 細胞は細胞分裂により増殖します。例えば、ヒトでは1個の受精卵から細胞分裂が周期的に繰り返され、約60兆個の細胞からなる成人の体が作られます。細胞増殖のサイクルの過程、すなわち1個の親細胞が分裂して2個の娘細胞ができる繰り返しの過程を細胞周期と呼びます。
 ここで重要なことは、一回の細胞周期で、親細胞の持つ成分、特に遺伝情報が娘細胞に正確に伝達されることです。細胞の遺伝情報は、染色体DNAに保持されていることはみなさんもご存じでしょう。染色体DNAは、細胞周期のDNA合成期(S期)と呼ばれる時期に正確に2倍に複製され、倍加した染色体DNAは分裂期(M期)に娘細胞に均等に分配されます。ヒト細胞では、細胞一個あたり全長約2メートルの長さのDNAが46本の染色体上に存在しており、この46本の染色体DNAはS期に92本に倍加され、M期にはそれらが過不足なく46本ずつ娘細胞に受け渡されます。
 遺伝情報の担い手である染色体DNAが、細胞周期を通じて正確に伝達されることが、生命の存続に必須であることは容易に理解できると思います。実際に、この過程にエラーが生ずると、癌をはじめとする様々な疾患や老化の原因になると考えられています。そのようなエラーを最小限にするべく、DNAの複製に関わるタンパク質、倍加した染色体DNAを均等に娘細胞に分配するための分裂装置などの細胞周期の実行因子は、その正確さにおいて驚くべきレベルに進化しています。
 本講義では、ヒトをはじめとした核を持つ生物(真核生物)を例にとり、細胞周期がどのようなメカニズムで進行しているかをお話します。特に、細胞周期のM期に着目し、染色体DNAが二つの娘細胞に正確に分配される機構を、コンデンシンというタンパク質との出会いとその後の私自身の研究成果も含めて詳細に解説したいと思います。

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