講義・セミナー

学術講演会のお知らせ

以下のセミナーを開催いたします。

日 時 : 2017年 2月16日(木) 午後 5時〜
場 所 : 神戸大学・バイオシグナル総合研究センター 5階研修室
講 師 : 増本 博司 博士(長崎大学医学部)
演 題 : CRISPR/Transposon gene integration(CRITGI)による染色体への遺伝子導入法の確立

講演要旨

生物には特有の優れた細胞機能、代謝経路をもっているが、それら細胞機能モデュールを他の生物種に移植することで新しい融合生物を造り出すことが可能である。これらの融合生物を使い、希少な天然物を安価に大量合成できるという産業面での貢献が期待できる。しかしながら細胞機能モデュールには多数の遺伝子が関与しており、その構成数は数十、百近くにまで達するものもある。そのため融合生物の作製には多数の遺伝子群を簡便に染色体に導入する遺伝子改変技術の確立が必要となる。
 多数の遺伝子を簡便に染色体に組み込む技術として、ゲノム編集技術であるCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)を使って出芽酵母染色体上に多数点在するTy1レトロトランスポゾン領域に遺伝子を導入する技術:CRISPR/Transposon gene integration(CRITGI)を開発した。CRITGIはTy1配列と外来遺伝子を持つプラスミド上のTy1配列にCRISPRにより二重鎖切断を導入し、相同組換え反応を利用して染色体上のTy1部位にプラスミドを導入する技術である。直鎖DNAを使った古典的な形質転換法では一回の形質転換で1コピーのプラスミドのみが染色体上に導入できるのに対して、CRITGIは最大30コピーのプラスミドを染色体に挿入することができた。またCRITGIを繰り返すことで、挿入部位となるTy1配列が染色体内で増加するとともに、挿入プラスミド数も最大90コピー近くまで増加させることができた。
 このようにCRITGIは多数のプラスミドDNAを出芽酵母の染色体に導入できる。さらにはCRISPRの新しい利用法として、多コピーの環状プラスミドDNAを染色体に導入できることを示している。現在、CRITGIを使い出芽酵母内に複数種の遺伝子を導入する技術の開発を行なっている。

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