講義・セミナー
学術講演会のお知らせ
以下のセミナーを開催いたします。
日 時 : | 2024年01月18日(木) 午後 4時〜 |
場 所 : | 神戸大学・バイオシグナル総合研究センター 520大セミナー室 |
講 師 : | 山元 淳平 博士(大阪大学・基礎工学研究科) |
演 題 : | 光回復酵素によるDNA修復反応の動的構造解析および高効率化 |
講演要旨
太陽光中の紫外線によってDNAはその化学構造が変化し、突然変異やがん化の原因となる紫外線損傷DNAが生成する。生物はDNA修復経路を介してこのような損傷DNAを除去・修復することでゲノム恒常性を維持しているため、DNA修復経路の遺伝的欠失は疾患の原因となる。種々のDNA修復の中でも、光回復は大腸菌から高等生物まで広範に保存されたDNA修復経路であり、光回復酵素と呼ばれる単一のフラビン酵素が光依存的に紫外線損傷DNAを直接修復する。これまでに、光回復酵素によるDNA修復反応はよく研究がなされており、光励起状態の二電子還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH–)から損傷への電子移動によってDNA上の化学結合の組み変わりが誘起され、修復反応が完了することが示唆されているが、その構造基盤は不明であった。
近年、X線自由電子レーザーを用いた時分割シリアルフェムト秒X線結晶構造解析により非平衡状態のタンパク質構造解析が可能となり、様々な光受容タンパク質の動的構造が解かれてきた。今回、光回復酵素によるDNA修復反応を本手法により原子レベルで追跡し、紫外線損傷DNAが酵素活性部位にて修復されてからDNA二本鎖の中へと戻るまでの過程のスナップショットを得た。スナップショットから構築した分子動画から、反応の進行に伴って酵素活性中心がどのように協奏的に動くか紹介する。また、近年取り組んでいる光回復酵素活性の人工的な高効率化に関する研究についても併せて紹介する。