講義・セミナー
特別講義のお知らせ(理学研究科)
特別講義「現代の生物学」
| 日 時 : | 2025年11月28日(金) 午後 1時20分〜 |
| 場 所 : | 理学研究科Z棟 Z103教室 |
| 講 師 : | 木村 友則 博士(大阪大学・免疫学フロンティア研究センター) |
| 演 題 : | アミノ酸キラリティの破綻を通して見る生命と疾患 |
授業のテーマ
ヒトの疾患での病態解明は、しばしば生命現象の根本の解明に行きつくが、キラリティ研究もその一つだろう。アミノ酸にはL体とD体の光学異性体(キラル体)が存在する。D-アミノ酸は自然界に存在しないとされてきたが、よく調べるとごく少量存在して、その存在量はほとんどぶれないことが分かる。このアミノ酸のキラリティは進化の過程で厳密に管理されてきたのだが、様々な疾患でその破綻が起きる。なので、どのようにしてアミノ酸ホモキラリティが破綻したのか、そして、ホモキラリティが破綻すると何が起きるのか、を解明することができると、新たな生命現象の解明、さらには病気の原因解明へとつながる。体内で腎臓はホモキラリティの維持に貢献しており、腎臓の機能が低下すると体内のホモキラリティの異常がD-アミノ酸濃度の上昇として顕在化する。一方で、体内で上昇してくるD-アミノ酸にも未解明であった生理活性があることが判明しつつあり、細胞レベルでの応答を介して腎臓の機能を亢進させるフィードバックが働く。これによって生体内ではホモキラリティが維持されている。疾患の背後に存在する、アミノ酸ホモキラリティの破綻と、これを元に戻す機構について紹介し、ホモキラリティに隠された生物界の真理に迫りたい。
