神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻
 構造機能材料学研究分野 (MM-3)

研究テーマ

新規高温構造材料の開発と評価 (田中)

 エンジンの燃費を向上させる最も確実な方法は,熱力学が教えるように燃料の燃焼温度の向上である。しかしながら高温の燃焼ガスを利用するためには, その温度に耐える材料が必要であり,むやみに燃焼温度を上げることはできない。 材料の耐用温度は材料の融点で決まるものではなく,外部から力が加わった時に材料内部の微細組織がどのように変化するかに大きく依存する。 より高い温度で使用できる材料の開発や,既存の材料をより長時間使用できる方法を確立することにより,航空機用ジェットエンジンや火力発電所の燃費向上に貢献することを目指す。

・Ni基超合金

現在高温構造材料として広く使われているのがNi基超合金である. Ni基超合金をより高温で,より長い時間使用するためには,外力がかかった時の 変形機構の詳細を知ることが重要である. これまで広く研究が行われてきた単純引張力 の場合だけでなく,圧縮力の場合や横から力を受けた場合,引張力と圧縮力が繰り返し 加えられた場合について, それぞれの場合の変形と材料内部の微細組織の変化の仕方を 実験的に明らかにするとともに,それらを理解するための計算機シミュレーション技術の 開発を行っている。

Ni base super alloy

・Co基超合金

Ni基超合金と同じような材料内部の微細組織を形成することが見出され, 世界的に開発が進められているのがCo基超合金である.歴史がまだまだ浅いこともあり 未だ実用には至っていないが, Ni基超合金と似ている点,異なっている点が明らかに なってきている。Ni基超合金とは異なるCo基超合金の独自性を如何に生かした新合金を 造るためには基礎的な研究が必須のものである。 Co基超合金の長所を伸ばし,短所を補う ための基礎研究を進めている。

Co base super alloy

・Fe基超合金

多量の耐熱構造材を必要とする場合,Ni基,Co基といった高価な合金を 使うことは難しい。そこで従来のFe基耐熱合金よりも少しでも高い温度で使うことの できるFe基超合金の開発が望まれている。 Ni基,Co基超合金の研究で得られた成果を 利用することで,従来のFe基耐熱合金とは全く異なる設計思想によって新しいFe基超合金 を生み出す研究を進めている。

Fe base super alloy

・高エントロピー合金の力学特性評価

高エントロピー合金とは5種類以上の元素をほぼ等量ずつ含む合金で複雑な 材料内部の微細組織を作らないにもかかわらず高強度であることが知られている。この 新合金の単結晶を作製し, その力学的特性を明らかにすることでこの合金が従来のものと どう違うのか,その違いはどこから来るのかを明らかにする研究を進めている。

HEA

新規熱電材料の開発 (田中)

熱電材料とは温度差を直接電気に変換することができる材料で,その信頼性の 高さから深宇宙探査機の原子力電池などに用いられてきた。また,逆に電流を流すだけで ヒートポンプとしてはたらくことから, 身近なところでは小型の電子冷蔵庫やコンピュータの CPUの冷却などにも用いられている。しかしながら,現在使われている材料にはPbやTeといった稀少かつ毒性をもつ元素が含まれている。安価で安全な熱電材料があれば性能は少々劣っていたとしても, 大々的に使うことで多量に捨てられている排熱のエネルギーを電気として 回収することが可能となる。我々はありふれた材料であるTiO2を基材とする熱電材料 の開発を進めている。

Thermolelectric

FTMP場の理論に基づく変形誘起不均質場の発展と
変形-破壊遷移過程のシームレス・マルチスケールシミュレーション (長谷部)

ミクロとマクロを繋ぐ独自のFTMP場の理論(Field Theory of Multiscale Plasticity)を提唱し,金属材料を始めとする各種材料において,変形誘起で発展する不均質場の統一表現を可能とすることで, 種々の複雑材料システムについての数理モデル化・計算機シミュレーションおよび定量的安定性評価を実現している。不均質場発展の支配原理の候補として, Flow-Evolutionary仮説を提案するとともに,同仮説に基づくDi-CAP*コンセプトを新たに提唱している。

*Di-CAP : Deformation-induced Context-dependent Autonomic Pluripotency

Thermolelectric

       

最近の成果として,変形誘起不均質場発展と連動して生じる余剰ひずみエネルギの蓄積・再配分・解放に基づく,変形→破壊遷移過程のシームレスな表現がある。以下は代表的な破壊モードに対する結果である。

Thermolelectric