ミルの体は小嚢と呼ばれるたくさんの袋状の部分が細い管でつながったような構造をしており,それぞれの小嚢の間に細胞壁のしきりはない.小嚢の中には多数の核や葉緑体があるが,藻体全体の細胞質がいわば一つの細胞のようにつながっており,嚢状体(coenocyte, ケノサイト)と呼んでいる.小嚢の形がミル類を分類する上での重要な特徴とされており,ミルには先端に突起があり,また小嚢に混じって毛の細胞も見られる.成熟すると小嚢の脇に生殖細胞を作る特別 な小嚢(配偶子嚢)ができ,そこから雌雄の配偶子が放出される.

ミルの体を構成する小嚢の表面部分.ミルでは先端に突起(矢印)があるが,近縁のイモセミルでは突起は顕著ではない.

ミル類ではアオサ類のような世代交代はなく,肉眼的な藻体(配偶体)から放出された雌雄の配偶子が受精後,直接もとの肉眼的な藻体に発達する.

神戸周辺の海域では,近縁の種として,ミルとよく似た外観を示すが小嚢の形(先端の突起がみられない)で区別 されるイモセミル(エゾミル) C. yezoense (Tokida) Vinogradova,やや黒っぽくまた平たくなるクロミル C. subtubulosum Okamura,岩などの上に平らに広がるハイミル C. lucasii Setchell(左写真),外観ではハイミルと似るがより長い小嚢を持つハイミルモドキ C. hubbsii Dawson なども観察される.

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