褐藻
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褐藻類(綱)はストラメノパイルや黄色植物(門)とよばれる,珪藻や菌類の一部(卵菌類)なども含まれるグループの一員で,いわゆる海藻類の中では進化的に最も新しく,一方,最も大型で複雑な形態の体を作る藻類である.光合成色素としてはクロロフィルaとcを含んでいるが,このほかに多量 のカロチノイド類(主にフコキサンチン)を含んでおり,このため黄色や褐色に見える.葉緑体は2次細胞内共生に由来し,もともとは紅藻類のような藻類が取り込まれたものと考えられている. 褐藻類は基本的にすべて海産で,淡水産のものは数種類しか知られていない.これまでに報告されている褐藻類はすべて多細胞性で,なぜか単細胞性のものは見つかっていない.藻体はシオミドロ類のように単列の細胞がつながったものから,カジメやワカメ(いずれもコンブ目)のように複雑な組織分化をしたものまで見られる.これらコンブ目の種では,藻体の内部に光合成産物などを輸送する陸上植物の師管の様なはたらきをする細胞糸をもっており,また大型の体を水中で浮かせて光を吸収しやすくする気胞(浮き袋)も見られるなど,高度な分化が見られる.褐藻類では緑藻(アオサ藻)類と同じく,種類によってさまざまな生活史型が見られ,アミジグサ目のように胞子体(複相の無性世代)と配偶体(単相の有性世代)がほとんど同じ形をしたもの(同型の世代交代),両者が著しく違う形態をしたもの(異型世代交代;コンブ目などでは胞子体が配偶体より大きく,一方,カヤモノリ目ではその逆)のほか,複相の世代だけが見られるもの(ヒバマタ目)が見られる.一般 に異型の世代交代は季節による気温などの極端な変化に適応して進化したものと考えられ,たとえばワカメでは水温が低い冬から春にかけては大型の胞子体が繁殖し,夏は小型でより高温への耐性が高い配偶体で越す. 褐藻類の生殖細胞は細胞の側面からでる2本の鞭毛を持っており,このうち前側へのびる鞭毛(前鞭毛)を波打たせるように動かして前進する.本来ならこのような鞭毛運動をすると,動物の精子に見られるように細胞は鞭毛の付け根の方へ押されるため,後鞭毛の側へ泳ぐはずだが,褐藻類をはじめとするストラメノパイル類の前鞭毛の表面 には管状マスチゴネマとよばれる多数のチューブ状の構造がついており,このため細胞が逆の方向へ押されると考えられている.一方,後鞭毛はふつう泳ぐ際の舵取りの役目を果 たしている.またこの後鞭毛の付け根のあたりの,葉緑体の表面には眼点とよばれる赤い点のような構造があり,走光性にかかわっている. |
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