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塾長ベルギー・フランス出張編
(2019年度)



2019年10月下旬、塾長がベルギー・フランス出張いたしました。同様の出張の用向きで関空のエールフランス搭乗口前に集まられた方々は右から神大科学技術イノベーション研究科の吉田健一先生、同大学農学研究科生物生産情報工学講座の伊藤博通先生、その奥様、そして応用動物学講座の万年英之先生です。(注:写真の中央でこちらに何故か微笑んでおられるフランス人らしき方は無関係)

離陸後2時間後、機窓からシベリア大地が広がり、機はそのまま太陽を追うように10時間ほど、

ようやっとパリ近郊のシャルルドゴール空港への着陸態勢に入りました。

無事空港に着陸。その後一行は空港発の高速国際列車、

タリス(Thalys)に乗り換え、一路ベルギーの首都ブリュッセルへ

ほぼ丸一日かけて晩秋の闇が包むブリュッセル市内の宿に到着しました。塾長的には実に4回目の訪問となりますが、やはりここは日本からは遠い場所です。

先ずは今回の出張の第一目的である神戸大学ブリュッセルオフィス主催の記念すべき「第10回国際シンポジウム」に出席いたしました。シンポジウムは神大の武田廣学長からのご挨拶、EU日本大使、EU科学技術大臣からのお祝辞を頂いて盛大に開会いたしました。

続く分科会セッションでは先ずは万年先生が御専門の和牛に関する最新の科学知見のご講演、

続いて伊藤先生が非破壊的に農作物の作付け状態を計測する画期的な科学技術についてご講演、

そして吉田先生のご司会のもと塾長が神戸大学発の腸管モデルの概要とその応用例について、前々回の同シンポジウム (写真館47に掲載) での講演からさらに発展した内容の講演をさせて頂きました。

講演後、ホーランドで機能性食品の開発の研究をされている女性研究者から、そして

フランス国立農学研究所(INRA)で塾長と同様に腸内細菌叢の研究をされNature Medicine等に精力的に論文を発表している Dr. Philippe Langella からもご好評を頂き、共同研究のオファーまでも頂きました。因みにPhilippe先生は吉田先生のINRA留学時代からの親友です。

ブリュッセル滞在中のちょっとした空き時間を利用し、同じシンポジウムセッションでご講演される独立行政法人酒類総合研究所成分解析研究部門の清水秀明先生もお誘いしてちょっとだけ市内を散策。ホテルから20分ほど歩くとヨーロッパ連合の本部が、

さらにもう20分歩くと塾長が以前から行ってみたいと思っていた半露天のシーフードレストラン、 「Mer du Nord (北海)」に到着。ここは最近日本人観光客には結構人気の観光スポットとなっています。

 店内の壁に書かれているメニューは殆んどフランス語でしたので、フランス語にご堪能な伊藤先生の奥様のご「通訳」の御陰様を持ちまして、


皆さん何とか食してみたいものを食することができました。

例えばこのお店の「名物」的なカニのクリームコロッケ、

そしてマテ貝のガーリックバター炒め。これらがベルギービールのレフ (Leffe) と絶妙に「協奏」して最高のランチとなりました。


シンポジウム終了の晩、吉田先生に連れらてサン・ジル地区の馴染みのお店 「La Vigne」で一行は食事をいたしました。このお店は塾長も3回目の食事となります (写真館31)が、ネットの口コミでもなかなかの評判の店です。お値段もたいへんリーズナブルです。

塾長が食したのは玉ねぎのスープ。コンソメ的な出汁の中にスライスしたタマネギの具、その上におそらくはラクレットチーズをとろりと麺状に浮かせてありました。旅に疲れた胃に優しい一品でした。

そして手長エビのパスタ。このお店は基本フレンチですが店主がイタリア系の方なのでこのようなイタリア料理的なものも食せます。ちょっと酸味のあるトマトとクリームのソースにエビ本来の香りが漂う、塾長が人生で食したパスタの中でNo. 1の一品となりました。


ブリュッセルのシンポジウムを成功裡に終え、塾長は吉田先生に連れられて先ずはパリに移動

そこから今度はまた高速鉄道に乗って一路西へ。車内の電光掲示板には「297km/h」と表示されています。我が国の新幹線並の早さで約1時間半、

 第二の出張目的地のRennes(レンヌ)に深夜到着しました。フランスはブルターニュ地方の中心地です。写真はライトアップされた市庁舎です。


出張の目的はこの町に所在する「Science & Tachnology of Milk & Eggs」研究所を訪問して、そこで取り組まれている研究の概要と何かともに取り組める研究課題をさぐるためです。所内入り口付近に掲載されたこのプレートに記されるように写真12のPhilippe先生が働いているINRAと密接に連携する研究所です。

研究所内の案内はPhilippe先生同様に吉田先生のINRA留学時代からの親友であるDr Eric Guedon です。彼は研究所内の5つの部門の1つの微生物学部門の部長さんです。彼の部門は乳製品を製造する際良きにつけ悪きにつけ関わってくる種々の細菌群の制御です(詳細はここをクリック)。  

約80人の常勤研究者に加えてフランスのみならず世界各地から30人程度の大学院生が研究に取り組んでいるそうです。


所内の「共用パイロットラボ」があって、これを使って様々卵や乳製品の製造・保存工程でより効率的、精巧かつ安全性の高い手法や機器の開発のための試験行っています。

この共用ラボは今や日本の製造業界でも浸透し始めている「IoT (Internet of Things) システム」を装備しているので実験条件の細かい条件の調節や産出される多岐、膨大なデータを収集・解析等を整然と行うことができます。

これによって例えば種々チーズの熟成課程を詳細に調べる事ができるそうです。


さらに卵製品や乳製品がヒトに食された場合それらがどのように消化されるのか?を調べるためヒトの胃と小腸の消化機能を再現したモデル使った研究も精力的に行われています。このモデルを構築したOlivia Menard女史から直々にモデルの仕組み、研究成果を教えて頂きました。彼女の右のベンチにある機器が「胃」だそうです。

そしてこの写真のベンチの上にある機器が「小腸」だそうです。胆汁や種々の消化酵素が実際のヒトの小腸と同様に分泌させることができるそうです。塾長ラボではヒトの大腸内細菌叢モデルがあるので両者がこのように「握手」すればほぼ一貫したヒトの消化管が完成されることになります。近い将来是非共同研究いたしましょう!

研究所の入り口辺りのロビーの壁にはこの研究所の各研究部門が過去12ヶ月に発表して論文の表紙のコピーがずらりと張り出されていました。職員はもとより来客も所内に入る際に否が応でも目に入る掲示です。仕事をしていな研究者はかなり嫌な思いをしながら毎日この前を通り過ぎているかと思います。「Work not published is work not done!」のイズムはここフランスでも健在です。

研究所訪問・見学を終えて少々時間があったのでレンヌの町中を吉田先生と散策いたしました。人口20万人ほどの町ですがその3割はレンヌ第1、第2の2つの大学の大学生です。古風な建物の風情とは対照的に実に「若気」に溢れる町でした。

町中の一番大きな市場を訪れました。レンヌの所在するブルターニュ地方はフランスでは結構寒冷地のようでワイン用のブドウを作ることは難しく、その代わりにリンゴの生産が盛んのようです。

お肉も安く、種類も豊富で、

この店頭の飾り物で分るようにジビエのお肉も普通に販売されています。現在フランスも含めヨーロッパのほぼ全域で豚コレラが流行し養豚業が大打撃を受けていると聞いていましたが、豚肉もイノシシ肉も普通に、普通の値段で販売されていました。流行は収束してしまったのでしょうか?

レンヌは大西洋から50キロほど離れていますが、沿岸の漁村から毎日新鮮な魚介類が運び込まれているようです。イセエビもホタテそしてウニまでも日本の半額以下のお値段でした。

チーズもさすが本場、そのバラエティは日本のどの専門店も太刀打ちできないほど豊富でした。

勿論ワインの品揃えもこんな感じです(どんだけ?!)。

市場のパンコーナーでは蕎麦粉で焼いたパンケーキのようなもの、ガレット・ブルトンが販売されていました。 写真35のキャプションと同じ理由でここブルターニュ地方はフランスでは結構寒冷地なので蕎麦の生産が盛んだからです。

現地ではこの写真のようにガレット・ブルトンの上にハムやチーズや生卵を載せて四隅を織り込んで焼き込んだものを、これまたご当地名物のリンゴサイダー、「シードル (BOLEE DARMORIQUE)」を飲みながら食するのが通だそうです(吉田先生談)。リンゴに蕎麦が名産ということでここレンヌ辺りは日本の長野県のような所なのだと感じた次第です。

翌日レンヌから日本への帰途の行程に入りました。その帰途のしょっぱなから本来ならばレンヌからバリのドゴール空港直行の高速列車が鉄道の運転手ストライキで運休。この国ではストライキがサッカーより「人気」のある「スポーツ」だそうで、

しかたなくパリ市内のモンパルナス駅行きの「迂回」列車にまだ真っ暗な早朝に同様な訳あり旅行客ら多数と乗り合い、

車内でまんじりと約2時間してモンパルナス駅。そこから重いスーツケースをガラガラと駅外の空港行きのシャトルバスに乗り換えました。途中シャトルバスの車窓からエッフェル塔(この写真の建物と建物の間)を遥かに望み、果たして空港に到着、その後無事に帰国いたしました。 今回の欧州の出張もたいへん有意義かつ思い出深いものとなりました。ほぼ全旅程をご引率、お世話頂いた吉田健一先生に深謝の意を表する次第です。ありがとうございました。

おまけの写真1:レンヌ滞在中にDr. Eric Guedonが運転する車に乗って雨が瀟々と降る路を北に約1時間、


おまけの写真2:何とあの世界遺産のモンサンミッシェルに連れていって頂きました。到着してしばらくすると天気が好転、「こんなに閑散としたモンサンミッシェルははじめて!」とEricが感激するほどの風景(ここをクリック)をしばし堪能させていただきましたサン・マロ湾上に日本で言えば江ノ島のように陸からちぎれるように浮かぶ小島その上にそびえる「修道院」とのことですが、その歴史をひもとくと「要塞」にも「監獄」にも使われていたそうです(詳しくはここをクリック)。Eric先生!この感激をほんとありがとう!

おまけの写真3: 勿論ご当地名物の卵オムレツも賞味させていただきました。たいへん蛋白なお味で、日本のだし巻き卵をイメージして食するとちょっと期待はずれかもしれません(注:あくまでも個人の意見です)