研究部門

膜ファウリング発生機構の解明および抑制技術の開発

処理原水中のファウラント解析と膜ファウリングに関する学理の構築

膜ファウリングを低減するための方策を合理的に提案するためには、膜ファウリングの発生機構を解明することが不可欠であります。膜ファウリングは膜自体と膜ファウリングを引き起こす物質(ファウラント)が相互作用を起こすことによって発生しておりますので、膜自体の特性だけではなく、どのような物質が主要なファウラントとなっているかも正確に理解しなくてはいけません。ほぼすべての水処理プロセスにおいて、ファウラントを含むろ過原水は様々な物質から構成される複雑系となっており、解析は困難を極めます。三次元励起蛍光スペクトル(excitation emission matrices; EEM)分析、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフ(liquid chromatogram-organic carbon detector; LC-OCD)法といった包括的な分析手法や2次元電気泳動法(two-dimensional polyacrylamide gel electrophoresis; 2D-PAGE)を用いたタンパク質同定に代表される個々の物質に焦点を絞った分析など、幅広い有機物分析手法を駆使し、困難なファウラント解析に取り組んでおります。

膜ファウリングの発生機構(概略図)

ファウラントのEEM(左)及び2D-PAGE泳動図(右)

マイクロ・ナノバブルを用いた膜ファウリング抑制技術の開発

マイクロバブル(MB)とは 直径が10マイクロメートル~数十マイクロメートル程度の微細な気泡であり、通常の気泡と比べて浮上速度が遅く、且つ気-液界面に物質が吸着する性質があります。このようなMB性質を利用して、我々は膜ファウリング抑制技術の開発を行っています。研究成果の一例として、河川水にマイクロバブルを発生させながら濾過した試験の結果を紹介します。図から、河川水にマイクロバブルを発生させながら濾過すると、高いフラックスが維持されていることが分かります。このことから、上水処理などの水処理プロセスにMBを利用することにより、維持管理の容易性や造水コストの低減に貢献するものと考えています。

マイクロバブルを用いた膜濾過試験結果と中空糸膜濾過イメージ

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