Research

金属基構造材料は我々の暮らしを支える最重要材料として位置付けられ,合金の構成相/相安定性の制御を目的とした合金設計と, 多種多様な加工プロセス(鋳造・塑性加工・付加製造)の応用は相補的関係にあって,私達はこれらの合金-プロセス開発の両面から基盤的・応用的研究を実施しております. 当研究室では,軽金属合金(チタン(Ti)基,マグネシウム(Mg)基,アルミニウム(Al)基)を主に取扱い, 航空機用材料,自動車用軽量高強度材料,および金属系生体材料の研究開発を実施しております. 目指す設計原理においては,材料の内部構造を原子サイズオーダーからマイクロメートルオーダーにわたる マルチスケールの材料組織情報を構造物の高性能化に活かす研究, さらには衝撃荷重下や生体内環境などの特殊環境をシミュレートする実験を通じて,構造材料の機械的性質や構造変化を理解するための研究を行っています.

軽金属(Ti,Mg,Al)を包括的に取り扱い,材料科学に立脚された学理の探求と実用化開発(産学連携の積極的推進)を両輪として 多様な社会の要請に応える設計原理・指針の構築を目指した研究開発に取り組んでいます. 特に,今後の研究展開では環境調和・カーボンニュートラルを指向した材料設計において 軽量化/易加工性化と高力学化(強度・延性・靱性・耐疲労特性・加工性)や生体機能化(生体適合性)を極限までに協調化する材料設計指針を創成します. 研究手法では実験研究を第一として,計算科学(FEM・CALPHAD・第一原理計算)・データ科学(機械学習)を並行(援用)して展開しています(デジタルツイン).

 

航空機・産業用チタン合金の研究開発

(1) 環境調和型チタン合金の創成

今後,航空機部材や自動車用部材においても省エネルギー化だけでなく,資源循環・リサイクルを指向した材料開発が益々重要となり, Ti合金においてもカントリーリスクの高いレアメタルフリーな合金開発・実用化が切望されている. 私達は,Fe, Cu, Niなどの汎用金属元素を協調した合金開発に成功しており, 例えばごく最近ではV-Free-Ti52AFS(Ti-5.5Al-1.5Fe-0.25Si-O)(合金(企業との共同研究)の強靱化・高速大延性化(熱間)の基礎原理を解明し, 日本発の新規な航空機Ti材料として実用展開を目指しております. また新規な組織設計の観点でも,これまでに脆いとの認識が強かったα’マルテンサイト(M)において 適切な合金組成・組織形態を呈すことで高加工硬化性・高延性を協調化させることに成功しております. これはα’Mのバリアント選択制において{13-41}双晶の関係性を強化した組織形成により, 高延性化され加えて逆Hall-Petch則が発現することを見出しております.

 

 

(2) 航空機チタン合金部材鍛造加工におけるデジタルツイン

最適な組織・材質をマクロレベルの“もの造り”で実現するために,Ti合金の鍛造加工を例に加工因子 (加工温度,ひずみ速度,ひずみ量,ひずみ経路)と マイクロレベルでの組織変化をリンクし,更に加工材の材質を精緻に予測するMethodologyを構築しております. 一般に,この方法論は「制御鍛造」とも定義されますが,実験結果を基軸としてデジタルツインの概念から「マルチスケール計算科学(FEM, CHALPHAD)」 および「データ科学(機械学習)」を援用・融合して真に最適な加工・組織・材質の関係性を予測する設計概念を目指しております(現在は航空機メーカと長期で共同研究を実施).

 

 

3D金属積層造形プロセスに関する研究開発 (新規な複合化・複相化組織制御の開発)

3D金属プリンタ・粉末床溶融結合法を駆使してマルチスケールな新規な複合化の概念を見出しております. 一例として,鋼(SKD61)の構成相を傾斜・積層構造とした複合組織形成および多様なAl基セラミック/耐火金属複合体の製造に成功しており, 新規な複合化・組織形成の可能性を見出しております.また,粉末床溶融結合法を活用した材質・形状の同時制御を通じ、優れた構造材料の創成にも取り組んでいます.

 

先端医療用バイオマテリアルの材料設計とプロトタイプデバイス創製に関する研究

金属材料はその優れた強度および靭性から種々の医療用デバイス,特に,事故や疾患により治療が必要となった生体組織の支持および 固定用のデバイスに使用されています.例えば,強度,耐食性,生体親和性の高いチタンは,組織固定用のクリップ, 骨接合プレートや人工股関節などのデバイスへと適用されています.さらなるインプラント使用者のQuality of Life向上を目的として, 生体内での優れた機械的性質だけではなく,生体内分解性や生体組織再建促進機能などの“プラスアルファ”の機能を有する医療用材料の創製が求められています.

「バイオマテリアル」という表記から特殊な研究対象であるかのように思われがちですが,これらの材料は生体を支える構造材料の一種であり, 研究過程は自動車用材料・航空機用材料などの,機械構造材料に対する取り組みと何ら変わることはありません. 以下に示した研究テーマの一部は,全学の基幹研究推進組織である 「未来医工学研究開発センター」における活動の一環として取り組んでいます.

 

(1) 生体内分解性を示す医療用材料設計およびプロトタイプデバイス創製

クリップ,骨折用デバイスなど一部のデバイスは,生体組織が修復された後には不要となります. ヒトの生体組織と大きく異なる諸性質を示すこれらのデバイスが治癒後も体内に存置されると, 場合によってはアレルギー反応や炎症の原因となります.このような課題を解決するものとして, 時間の経過と共に生体内で分解され,体外に排出される生体内分解性デバイスが最近注目されています. マグネシウムおよび亜鉛や鉄合金は,生体構成元素の一つであることから,安全性が高い材料として大きな期待を集めています. 各種デバイスへ適用するためには,これらの金属材料についてルチスケールでの内部組織制御が必要不可欠です. 実験および計算の両面から,材料の変形メカニズムおよびミクロ組織形成メカニズムの解明に取り組みます. 得られた知見をもとに,要求性能を有するモデル材料を創製し,プロトタイプデバイスを試作します.

 

 

(2) 副効用を示すインプラント創製に向けた医療用複合材料の創製に関する基礎研究

骨形成能を示すリン酸カルシウムなどの生体活性セラミックスや生体内分解性,抗菌性を示すポリ乳酸などの 高分子材料を分解性金属と複合化することにより,炎症抑制や生体組織再建の迅速化などの副効用を示す材料の創製を目指します. このような高機能化を実現するプロセス条件および機能制御のメカニズム解明についても取り組んでいます.

 

 

輸送機器用マグネシウム合金の高性能化に関する研究

昨今の省資源・省エネルギーや低炭素社会実現に向けた社会的要請により,自動車や航空機などの輸送機では軽くて,強く,リサイクル性を有する材料が切望されています. 要求性能を満足するためには,必要最小限の有効な添加元素を活用し,最適構造を造り込むことが重要となります. この研究課題では,第一原理計算の援用による元素添加効果の推定,計算科学に基づくモデル材料創製,温度と変形速度を制御可能な 材料試験機を活用した高精度な変形応答解析,計算シミュレーションの援用による変形メカニズムの解明に取り組んでいます.

これまでの常識では,もろい材料と認識されてきたマグネシウムも,マルチスケールで内部組織を制御することにより, ねばり強く,常温で成形可能となる材料に生まれ変わることを様々な材料創製研究を通じて解明しています. この研究テーマでは,高エネルギー付与によるナノ結晶金属材料の創製,電子ビーム蒸着による高性能皮膜の創製, 各種構造材料が示す破壊現象を高速変形の可視化実験を通じて解明する研究などに取り組んでいます.

 

 

主な専用研究設備

主な共同研究機関