低分子量Gタンパク質とは?

 

どのような分子で、細胞の中でどのような働きをしているか

Gタンパク質は分子量約21キロダルトンの、GDPあるいはGTPを結合しているタンパク質です。普段はGDPが結合していますが、細胞外からシグナルが伝わってくるとGTPが結合して活性化型になり、下流へとシグナルを伝える役割をする「分子スイッチ」として働きます。
 Gタンパク質には単量体で働くものと3量体で働くものがあり、単量体で働くものは「低分子量Gタンパク質」といわれます。低分子量Gタンパク質には、細胞の増殖を制御するもの(Rasファミリー)、細胞の形や運動を制御するもの(Rhoファミリー)、細胞内膜輸送を制御するもの(Rabファミリー)などに分かれ、細胞の中で様々な機能を担っています。

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細胞の形や運動を制御するシグナル伝達

 

細胞の成長、運動を制御するRhoファミリー
 ・癌遺伝子産物と転移抑制因子

私たちはRhoを活性化する活性化因子GEF(Guanine-nucleotide Exchange Factor)であるLbc(Lymphoid brast crisis)が、アクチン骨格のストレスファイバーを形成して細胞の癌化を誘導することを見つけました。Lbcは癌遺伝子産物として同定された47kDaではなく309kDaの巨大分子であり、シグナル伝達の場を与えるアンカータンパク質であることが分かりました。
 また、Lbcにはnm23という癌転移抑制因子が結合し、Lbcによるストレスファイバー伸長をnm23が抑えること、さらにはnm23/Lbcを介したシグナル伝達の上流には細胞外マトリックスのインテグリンシグナルがあることが分かりました。

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細胞内膜輸送を制御するシグナル伝達

RabとRhoをつなぐシグナルの存在

私たちはRhoの仲間であるRacの下流因子を、モデル生物である線虫 C.elegans で探したところ、VPS9ドメインタンパク質であるRin-1が見つかりました。VPS9ドメインはRab5の活性化因子(GEF)に共通して見つかるドメインで、Rab5のGDPをGTPに交換することによりRab5を活性化すると考えられています。
 このことは、細胞形態や運動を司る低分子量Gタンパク質であるRhoから細胞内膜輸送の制御を行う低分子量Gタンパク質のRab5へシグナルが受け渡されていることを意味しています。
 このような低分子量Gタンパク質間のシグナルの受け渡しが、どのように行われているのか、単純なモデル生物である分裂酵母を用いて調べようとしています。

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