2022年3月17日 プレスリリース

ArCS II国際法制度課題ブリーフィングペーパー・シリーズ第6号「Environmental regulation of Arctic shipping: Recent developments(北極海運の環境規制をめぐる最近の動き)」が発行されました。

ブリーフィングペーパー・シリーズ
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国際法制度課題がArCS IIにおける研究成果を広く社会に還元することを目的として発行している「ブリーフィングペーパー・シリーズ」(BPS)において、第6号「Environmental regulation of Arctic shipping: Recent developments(北極海運の環境規制をめぐる最近の動き)」(ファクトシート)が発行されました。執筆者は、国立極地研究所国際北極環境研究センターの西本健太郎教授です。

第6号では、北極域における船舶運航の影響を軽減するための環境規制について、北極評議会における取組みと国際海事機関(IMO)における国際的な規則・基準作りに着目し、近年どのような国際的な議論が行われているのかを紹介しています。

持続可能な海運を実現するための国際的な規則・基準としては、2014-2015年にIMOで採択された極海コードが重要な役割を果たしています。しかし、極海コードでは扱われていない環境問題もあり、その採択・発効以降も北極海運の環境影響については議論が継続されてきました。このファクトシートでは、動きが見られた主な問題として、重質燃料油(HFO)の使用・輸送、大気汚染、水中騒音、外来生物の侵入、船舶からの排水を取り上げ、それぞれについて議論の現状を紹介しています。

油濁事故が発生した場合の影響が大きく、燃焼時により多くの大気汚染物質を発生させる重質燃料油(HFO)については、北極海域で船舶燃料として使用・輸送することを禁止するMARPOL条約の改正が昨年行われたことが説明されています。また、氷の融解を促進するブラックカーボンの排出削減に向けて、北極とその周辺ではよりクリーンな燃料を自主的に使用するよう促す勧告が2021年にIMOで採択されたことも紹介しています。さらに、大気汚染、水中騒音、外来生物の侵入、および船舶からの排水の問題についても、IMOと北極評議会における取組みの具体的な状況や、関連するガイドライン、報告書、政策文書にどのようなものがあるかを紹介しています。

なお、ファクトシートで取り上げた問題のうち、重質燃料油(HFO)に関するMARPOL条約の改正については、ArCS IIプロジェクトにおける研究成果として、西本健太郎「北極海域における船舶による重質燃料油(HFO)の使用・運搬規制―海運の国際的規律と北極域の国際秩序との交錯―」『海事交通研究』70集(2021年)7-18頁もあります。(http://www.ymf.or.jp/zaidan/kikansi/kaiji2/#05

著者紹介:

西本 健太郎(にしもと けんたろう)

国立極地研究所国際北極環境研究センターおよび東北大学大学院法学研究科教授。ArCS IIプロジェクトでは戦略目標4「北極域の持続可能な利用のための研究成果の社会実装の試行・法政策的対応」の統括役を担当。研究関心は、海洋法及び極域法。



<関連情報>
■ ArCS II国際法制度課題ブリーフィングペーパー・シリーズ
 < https://www.research.kobe-u.ac.jp/gsics-pcrc/ja/arctic/press_release/j_briefing_papers.html >