海藻とはなにか
 この本で主に取り扱うのは,いわゆる「海藻(かいそう)」ですが,はじめに海藻と植物プランクトンはどう違うのか,また「藻(も)」ではなく「草」という字を使う「海草」とはどう使い分けているのか,といったことを少しまとめておきたいと思います.

緑藻(アオサ藻

褐藻

紅藻

 

 「海藻」はいわゆる「藻類(そうるい)」のうち,海に生活しているものを指しますが,実際にはある程度大型で,岩などに付着して生活しているものに限定して使うことが多いようです.ただ,「藻類」という言葉の指すところは非常に曖昧です.これは,もともと「藻類」は水の中に生活する「植物」のうち「原始的なもの」というふうに使われてきたのですが(陸上に生活して,花をつける「高等植物」に対して,コケ類などと一緒に花をつけない「下等植物」をいう呼び方もされてきました),次の章以降に述べるように,生物の進化の道筋を考えて生物を分類しようとすると「植物」というのも,なかなか定義することが難しい用語です.すなわち,「植物」や「藻類」を特徴づける重要な性質の一つである,光合成を行う葉緑体を持っているということは,原生動物と光合成を行う細菌(らん藻またはシアノバクテリア)の間で,または原生動物とすでに葉緑体を持っている藻類の間で,細胞内共生という現象によって獲得されたもので,またこのような共生は何度も繰り返しおこっているらしいということがわかってきました.したがって,「藻類」というのはみんな光合成という「植物」を特徴づける性質を持っており,見た目や暮らしぶりは似ていますが,親戚 同士ではなく,他人のそら似のものが含まれているということになります.

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