海藻類の分布  
陸上で,或る場所にどのような植物が生えるかということは,大きくはその場所の緯度や気候,標高などで異なり,また局所的には日の当たり具合,水はけ,土壌の種類,他の動植物との競合などによって決まってきます.海藻類においても大まかにはこれと似ていますが,それぞれの沿岸の温度は海流による影響を強く受けることから,水平分布は緯度のみならず海流との強い関係が見られます.また,水の中は水の透明度によって光の環境がより劇的に変化し,どんなに透明度のよい場所でも100-150メートルくらいの水深になると生存に必要な光の量 が確保できなくなるます.そのため,垂直方向でみると陸上の植物が数千メートルの幅で生育しているのに対して,海藻類の生育は水面 下のはるかに浅いところに限られています.ここでは海藻類の水平方向と垂直方向での分布の特徴についてみてみます.
水平分布

海藻類の水平分布をきめる大きな要因は、一般に水温条件と海流であると考えられています。すなわち、それぞれの海藻類がある場所で成長・繁殖できるかどうかは水温(夏季の高温と冬季の低温)への耐性により決まっていることが多いのです。海流はその場所の水温に大きな影響を及ぼすほか、胞子の散布などによる分布の拡大にも重要な役割をはたしています。

このため、南北方向に長くのび、寒流と暖流の両方の影響を受ける日本の周辺の海岸では、世界でもまれなほど多種多様な海藻類を見ることができます。この中で、きわめて大まかには寒流である親潮の影響が強くおよぶ北海道知床半島から東北の太平洋沿岸にかけての沿岸では、寒流性(北方系)の海藻類が多く、一方、暖流である黒潮や,それから分かれた対馬暖流の影響の及ぶ範囲(本州の中部太平洋沿岸から九州を経て北海道北部にいたる日本海沿岸域)には温帯性の海藻類が多くみられます。また奄美大島や沖縄、八重山諸島にかけては亜熱帯・熱帯性の海藻類が見られます。

日本周辺の海流の概況

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