研究内容

1) 芳香族・脂肪族アミン類の微生物代謝 / Biodegradation of aromatic and aliphatic amines by microorganism

教育方針イメージ

自然環境における微生物の本来の働きは、有機物を無機物にまで分解し、炭素や窒素サイクルを効率的に循環させることです。近年、急激に増大した人工合成化合物も微生物分解によりこのサイクルに組み込めれば、環境問題の解消に役立つといえます。
芳香族アミン類の微生物代謝ではアンモニアの遊離を伴う脱アミノ反応を経ることから、炭素、酸素、水素原子のみから構成される芳香族化合物とは異なる特異な代謝酵素系やそれらの遺伝子群が存在すると予想し、芳香族アミンの微生物代謝を網羅的に行なってきました。その結果、当初の予想が正しいことを裏付ける数々の新規代謝酵素系やこれらが関与する特異な微生物代謝経路を見出すことができました。見出した反応機構や酵素は、2)で紹介する微生物変換への利活用が可能です。現在、脂肪族ジアミン類の微生物代謝を明らかにする研究を行っており、新規なトランスアミナーゼを見出し、その酵素特性や遺伝子の解析を進めています。


2) 微生物・酵素変換による有用物質の生産 / Biotransformation of aromatic and aliphatic amines by microorganism

目標イメージ

1)の研究の過程では、珍しい代謝酵素系やそれら酵素系が関与する代謝・変換過程を見出すことが出来ます。そこで、新たに見出した反応機構や解析の過程で得た情報やヒントを基に、微生物による有用物質の変換へ積極的に応用することを試みています。現在、アリルアルキルアミン類を立体選択的にN-アセチル化する微生物酵素の特性解析を進めています。


3) 特異な微生物酵素の検索と特性解析 / Characterization of hydrolytic enzymes

目標イメージ

微生物由来の加水分解酵素を中心にその作用機作などを明らかにしています。内容として…

① アスペルギルス属糸状菌の生産する色素タンパク質分解酵素の特性解析: かつお節の製造の過程で”かび付け”と呼ばれる工程があります。当研究室では、かつお肉が脱色される要因の一つとしてカビ由来のアスパルティックプロテアーゼを見出し、同酵素および遺伝子の特性を解析しています(マルトモ株式会社との共同研究)

② 卵殻膜分解酵素の特性解析とその利用: 卵殻膜は創傷治療効果があると言われており、その構成タンパク質やペプチド類は天然の機能性素材として利用が期待されています。しかしながら、不溶性のタンパク質のため有効利用には限りがあります。当研究室では、Pseudomonas属細菌のプロテアーゼが卵殻膜タンパク質を加水分解し、可溶性のタンパク質やペプチドが得られることを見出しています。((一財)旗影会より特別助成をいただき、研究を進めています。)

③ 耐塩性微生物酵素の耐塩性機構の解明: 微生物酵素の産業的な利用をめざし、低温、高温、酸、アルカリ、高塩濃度等の環境下において安定で高活性を示す極限環境下から種々の微生物酵素が探索されてきました。一方、幅広い温度、pH、塩濃度に対して安定で同程度の活性を示す酵素もまた有用です。当研究室では、”耐塩性”をキーワードに食品サンプルから単離した微生物由来酵素の耐塩性機構を明らかにすることを目的とし、研究を進めています。

④ リパーゼを触媒とした糖の脂肪酸エステルの合成: 糖の脂肪酸エステルは非イオン性界面活性剤の一つで乳化剤として利用されています。同エステル化合物は生物由来の材料から合成されるため、生物的な分解が可能で、従来の界面活性剤と比較して環境にやさしいと言えます。当研究室では、Streptomyces属放線菌由来リパーゼについてその特性解析を進めています。(タイ国・チェンマイ大学との共同研究)