home > Backgound  2. 側根形成とオーキシン



【オーキシンと側根形成】


2. シロイヌナズナの側根形成とオーキシン



 維管束植物の主根(発芽後に伸長する最初の根)は胚発生の時にできた幼根に由来します。それに対して、側根は既に存在する根(主根、側根、不定根)の内部組織から胚発生以降に発生してきます。シロイヌナズナの根の横断面を見ると、外側から表皮、皮層、内皮、内鞘が同心円状に1層ずつあり、その内部に木部・師部などの維管束組織があります。側根形成は維管束の原生木部に接する内鞘細胞が非対称に分裂することによって始まり、これらの分裂した細胞は規則的に分裂を繰り返し側根原基を形成します。やがて、側根原基に新たな根端分裂組織が確立し、その活動が活性化すると主根組織を突き破って側根として成長します。
 多くの植物種でも、外生のオーキシン(天然オーキシンのインドール-3-酢酸[IAA] や人工オーキシンのナフタレン酢酸 [NAA] や2,4-D)でシロイヌナズナの根を処理すると側根形成が促進されます。一方、植物をオーキシンの極性輸送阻害剤で処理すると側根形成が阻害されます。側根形成に必要なオーキシンは地上部で合成され地下部に運ばれてくると考えられています。これらのことから、オーキシンは側根形成にとって重要なホルモンであることがわかります。
 これまでオーキシンの生合成やホメオスタシス、オーキシン輸送やシグナル伝達に異常のあるシロイヌナズナ変異体を用いた研究からも、オーキシンが側根形成に必要なことが示されてきました。しかし側根形成を実際に制御する因子についてはあまり詳しくわかっていませんでした。


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