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微生物機能化学研究室は微生物のゲノム機能の解明とその応用を専門とする研究室です。


TEL.
078-803-5891

〒657-8501
神戸市灘区六甲台町1-1 
神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科
科学技術イノベーション専攻
バイオ環境講座
(農学部生命機能科学科応用生命化学コース)
微生物機能化学教育研究分野 (吉田研)

最新技術と自由な発想で新しい応用微生物学の創成を目指します

当研究室では、Bacillus subtilis及び他の菌が有するイノシトール代謝系の解明とその応用など、微生物のゲノム機能の解明を通じて有用物質生産を目指す研究開発を行っています。

イノシトール類について

 イノシトールはシクロヘキサンの6つの炭素それぞれに結合する水素基が一つずつ水酸基に置き換わった構造をしており、水酸基の立体配置の組み合わせによって9種類の立体異性体が存在します。myo-inositol は、自然界に最も広く存在するイノシトールで、米ぬかなどから比較的安価に供給されます。他のイノシトール異性体は希少で高価ですが、なかには有用な生理活性を示すものがあります。例えば、D-chiro-inositol やpinitol*はインスリン様作用を示し、血糖降下作用や多嚢胞性卵巣症候群のへの適応があります。scyllo-inositol はβ-アミロイドの凝集を抑制する効果があるので、アルツハイマー病の治療薬として期待されています。
*D-chiro-inositol の3番炭素のメトキシ体


B. subtilisのイノシトール代謝系に関する基礎・応用研究

・枯草菌代謝工学による有用希少イノシトールの生産
・枯草菌におけるNADPH再生バランス機構の理解とその応用
・イノシトール脱水素酵素の機能改変.
・機能未知iolH遺伝子の酵素学的・生理学的意義の解明
 B. subtilis のイノシトール代謝経路を応用し、自然界から比較的安価に供給できるmyo-inositol から、アルツハイマー病への治療薬への効果が期待される希少価値の高いscyllo-inositol への変換する代謝工学を行っています。また、それに付随して酸化還元に必要な補酵素の再生系の理解や、鍵酵素の補酵素認識機構、さらには生理的な機能が不明な関連遺伝子の解析など、より深い細胞システムの理解を目指しています。この研究は、iBioKならびにALCAの一環として実施されています。


好熱性バチルスGeobacillus kaustophilus HTA426のイノシトール代謝に関わる研究

G. kaustophilus HTA426におけるイノシトール代謝の生理的意義の解明
G. kaustophilus HTA426の イノシトール分解系遺伝子群の発現調節に関わる研究
 G. kaustophilusB. subtilisと同様にして、myo-inositol を単一の炭素源として生育出来ます。しかし、これに関わる遺伝子機能とその調節機構については未だ完全に解明されていません。G. kaustophilus myo-inositol を資化する際に用いる酵素を大腸菌に発現させ、酵素の特性解析を行う研究、また、myo-inositol 資化不能なG. kaustophilus 突然変異体を創出し、次世代ゲノムシーケンサーでイノシトール代謝系の調節遺伝子の探索を行っています。加えて、G. kaustophilus をモノづくりに活かす挑戦を産学連携で進めています。この研究はiBioKフジッコユニット研究の一環として実施されています。



枯草菌による有用蛋白質の分泌とその応用

・人工セルロソーム呈示枯草菌細胞
 セルロースやヘミセルロースは植物バイオマスの主要構成物で、強固な構造を持つ難分解性物質です。本研究室では、B. subtilisの膜表層に人工的にデザインしたセルロソーム(セルラーゼ複合体)を呈示し、結晶性のセルロースを効率的に分解する枯草菌細胞の創出を目指してます。この研究はNC-CARPプロジェクトの一環として実施されています。
・枯草菌フィターゼ分泌の高度効率化
 フィチン酸は穀類や豆類の主要なリン酸の貯蔵形態として米ぬか等に多く含まれます。本研究室では未利用バイオマスである米ぬか中のフィチン酸のリン酸を切り出してmyo-inositol を生産するフィターゼの分泌生産の効率化を試みています。この研究はiBioKフジッコユニット研究の一環として実施されています。


●アルファルファ根粒菌のイノシトール合成

 アルファルファ根粒菌Sinorhizobium melilotiにはイノシトールリン酸合成酵素があり、またこの酵素をコードする遺伝子は塩ストレスで誘導されることがわかりました。フランス・トゥルーズLIPMのBruand博士のグループと共同で、この酵素の生理的また共生窒素に関する機能の解明を進めています。同時に、この遺伝子を枯草菌で発現させたらどうなるかという応用研究も行っています。


●ダイズ根粒菌のPHB合成

ダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicumは細胞内にバイオプラスチックとして有用性のあるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を多量に蓄積します。この蓄積にはPHBの合成・分解に関わる酵素が必要なのですが、それ以上に蓄積しはじめたPHB顆粒を安定化させるファーシンというタンパク質が重要な役割を果たすことがわかってきました。この機構を詳細に解明してPHBの効率的な生産に役立てることを目指しています。


B. subtilisによる2,3-ブタンジオール産生研究

2,3-ブタンジオールは溶媒、燃料、ポリマー素材などに利用され、種々の化学品製造に活用できるためバイオリファイナリーの観点から注目されています。B. subtilisは元来2,3-ブタンジオール発酵が可能ですが、本研究では代謝工学によって2,3-ブタンジオール生産の高収率化を目指しています。将来的な展望としては木質などのバイオマスから直接 2,3- ブタンジオールを生産する株を作製することも視野に入れます。


バナースペース

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