研究内容
生物はゲノムの指令に基づいて構築された細胞応答システムであり、生体内で生産されるホルモンなどの生理活性物質をシグナルとして、また同時に刻々と変動する外界環境の変化に対応して生命機能を維持統御しています。別な表現をすれば、生命活動は自分自身のゲノムに内包された情報による調節と、外界環境からの入力への反応とが並行・協調して営まれています。しかし、この内からと外からの生命機能制御、そしてこの両者の関係には、まだ不明の点が多く残されています。私たちは以下のテーマでシグナル伝達の仕組みを解析することにより、これまでに知られていなかった多彩な生体機能制御の仕組みを明らかにすることを目指しています。
(1) タンパク合成・細胞成長を制御するTORシグナル伝達機構
TORは免疫抑制剤や抗がん剤として注目されるラパマイシンの標的となるタンパク質リン酸化酵素です。TORは栄養状態(アミノ酸やグルコースの濃度変化)や細胞増殖因子をはじめ、種々の外的環境の変化に応じてタンパク合成や細胞成長などの主要な細胞機能を制御しており、その制御異常は、がんや2型糖尿病、神経変性疾患などの疾患と結びつくことが知られています。TORは真核生物全般に保存されており、哺乳類培養細胞とモデル生物の分裂酵母を用いてTORシグナル伝達経路の多様な制御機構および機能について分子レベルでの解析を行っています。
(2) 細胞の栄養感知・応答の分子機構
アミノ酸や糖などの栄養は細胞が生命機能を維持するための必須な要素です。近年、細胞は栄養状態の変動を多くの分子を駆使して感知し、TORシグナルだけでなく様々な情報伝達経路をコントロールすることで機能の制御を行っていることが明らかとなっています。新しい栄養の感知システムおよび細胞の制御機構の発見と解析を行っています。
(3) 小胞体におけるタンパク質品質管理機構
(4) 現在及び過去のプロジェクト
- 現在、神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究チーム「資源動物のシグナル伝達制御に関する研究」に参加しています。
- 参加していた神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究チーム「タンパク質のシグナル伝達機能研究」が平成26年3月で終了しました。
- 参加していた神戸大学グローバルCOEプログラム「統合的膜生物学の国際教育研究拠点」が平成24年3月で終了しました。
- 神戸大学21世紀COEプログラム「蛋白質のシグナル伝達機能」の最終報告を掲載しています。