神戸大学大学院工学研究科機械工学専攻センシングデバイス工学分野 MA-2神野・肥田 研究室 |
研究方針
実用を見据えた基礎研究を推進しています
研究内容
機能性薄膜材料
- 1. 圧電薄膜: PZT系圧電薄膜,KNN系圧電薄膜
- 2. アモルファス薄膜電池: 全固体Li酸化物薄膜電池
- 3. 圧電薄膜評価: 薄膜材料の圧電特性測定
- 4. ウルツ型六方晶強誘電体薄膜: ZnO薄膜の強誘電性・圧電性
- 5. 強誘電体薄膜の光電気化学効果: エピタキシャルPLT薄膜の光電気化学特性
機能性マイクロデバイス
- 6. 圧電薄膜エナジーハーベスト: 圧電振動発電,環境発電
- 7. 圧電薄膜音響デバイス: 圧電薄膜スピーカ,触覚センサ
バイオ分析用マイクロデバイス
- 8. 植物生育モニタリングデバイス: マイクロ流体デバイス,フォースセンサ,根の生育分析
- 9. 細胞の分析・操作技術: マイクロ流体デバイス,単一細胞分析
- 10. 植物寄生線虫行動分析デバイス: マイクロ流体デバイス,害虫行動分析
機能性薄膜材料
主にスパッタ法を用いて圧電材料の薄膜化に関する研究を行っています.我々は独自に開発した多元スパッタ装置を用いて,Pb(Zr,Ti)O3系を中心とした圧電材料の薄膜化や人工超格子薄膜の作製,更にSPring-8等を活用した結晶構造の精密分析と圧電特性との関係を明らかにする研究に取り組んでいます.この他,有害物質を含まない圧電薄膜材料として(K,Na)NbO3系圧電薄膜の開発を進めています.現在大電力の電力貯蔵を目的としたリチウムイオン電池の研究開発が注目される一方,マイクロデバイスを駆動する電力をチップ上に形成した自立型デバイスに関する研究が進められています.電極活物質および固体電解質をアモルファス薄膜として積層成膜することで全固体薄膜リチウム電池の作製および充放電メカニズムの解明に関する研究を行っています.リチウム酸化物薄膜をスパッタ法で作製し,実用的な薄膜材料および積層構造の探索を通して容量密度およびサイクル特性の向上に向けた進めています.
独自開発の圧電薄膜材料評価システムにより各種圧電薄膜の圧電横効果を高精度に評価することを可能としました.アクチュエータ応用を目的とする逆圧電特性,またセンサやエナジーハーベスト応用に必要な正圧電効果をユニモルフカンチレバーを用いて測定します.この圧電薄膜評価技術がIEC国際標準規格として採用され,圧電MEMS技術に不可欠な技術として用いられています.図はユニモルフカンチレバーを用いた逆圧電特性評価システム.
AlNやZnOに代表されるウルツ型六方晶はこれまで焦電体に属する圧電薄膜として分類されてきましたが,近年これらの薄膜材料に異なる元素をドーピングすることにより圧電特性の向上に加え強誘電性が発現することが報告されています.我々はZnO薄膜に着目して,新しいドーパントの探索により圧電特性の向上に加えて半導体メモリへの応用を想定した研究を行っています.図はSi基板上に形成した(Ce,Mn)置換ZnO薄膜のP-Eヒステリシス曲線.
強誘電体は大きな自発分極を有しており,光照射により大きな電圧を発生することが知られています.我々はLaをドープしたPbTiO3(PLT)エピタキシャル薄膜を光電極として水分解およびCO2の還元に向けた研究を行っています.現在PLT薄膜表面に金属ナノ粒子を用いて表面修飾することにより,光電流の増加および光電気化学反応の向上に取り組んでいます.図はPLT薄膜を光カソードとした水分解反応メカニズム.
機能性マイクロデバイス
輸送機器や構造物等から生じる振動を高い効率で電気エネルギーに変換し,センサノードの電源として利用するエナジーハーベストの研究が注目を集めています. 環境発電,もしくは振動発電技術とも呼ばれ,自律分散型・メンテナンスフリーのセンサネットワークを実現することが可能で,安全,安心,更に省エネルギー,省資源に貢献することが期待されています. 我々は高効率かつ実用的なMEMSエナジーハーベスターを目的として,特に金属箔上に作製した圧電薄膜を用いて大変形可能な圧電薄膜発電素子を試作し,その発電特性評価に関する研究を推進しています.写真はカード型発電素子の測定.スマートフォンを中心に新しい機能を有するマイクロフォン・スピーカーの需要が求められています.研究室では携帯機器への応用を目的とした圧電薄膜音響デバイスの開発に取り組んでおり,素子設計,試作および評価を行っています.超音波デバイスや圧電触覚デバイス等の研究も行っており,関連企業との共同研究も実施しています.図はガラス基板上に作製したPZT薄膜による透明スピーカの外観写真.
バイオ分析用マイクロデバイス
微小なフォースセンサを一体化したマイクロ流路デバイスを開発し,植物の根の生育メカニズムの解明を進めています.本デバイスにより,根の成長に伴う推進力など植物固有の性質を明らかにし,将来的には品種改良や育成技術の向上に貢献します.マイクロ流体デバイスを用いた単一細胞の操作技術の開発を行っています。マイクロ・ナノスケールの微小空間内で細胞を操作することで高い時間・空間分解能での分析を実現し,外部刺激に対する細胞の応答を精度よく評価することができます.
マイクロ流路デバイスを用いて植物の害虫(寄生性線虫)の行動分析を行い,得られた知見より新規防除法の確立を目指しています.微小空間内では化学環境などの制御が容易であり,かつ詳細な観察が可能であることから,分析効率や精度が飛躍的に向上します.