・必要最低限の高圧ガスのみ実験室に持ち込む。使わないものは気燃庫に保管。
・実験室を出る時はボンベが閉められているかを確認する。
・決められた場所以外にはボンベを置かない。
・ボンベは鎖、アングルなどで固定しておく。
春学期初期に実施される高圧ガス取り扱い講習を受け,安全に留意すること。
高圧装置とは,各種の単位機器の組合せによって構成された複合体である。
高圧発生源:ガス圧縮機,高圧ガス容器(ボンベ)等
高圧反応機:オートクレーブ,各種合成管,触媒充填管等
高圧流体輸送管:循環ポンプ,導管流動系等
高圧機器類:圧力計,各種高圧弁等
安全機器類:安全弁,逆火防止弁,逆止弁等
高圧ガスは,高圧ガス取締法によって次のように分類されて規制を受ける。
表14.1 高圧ガスの分類
圧縮ガス (圧縮アセチレンガス) |
常温で10kg/cm2以上の圧縮ガス 35℃で10kg/cm2以上となる圧縮ガス (ただし,圧縮アセチレンガスは常温で2kg/cm2以上,または15℃で2kg/cm2以上となるもの) |
液化ガス (その他の液化ガス) |
常温で2kg/cm2以上の液化ガス 2kg/cm2になる温度が35℃以下の液化ガス (ただし35℃で0kg/cm2を超える液化ガス中,シアン化水素,臭化メチル,酸化エチレン) |
表14.2 特定ガスの区分
可燃性ガス |
爆発下限が10%以下,または上下限の差が20%以上のガス |
毒性ガス |
じょ限量(許容濃度)が200ppm以下のガス |
特定高圧ガス |
圧縮(水素,天然ガス),液化(酸素,アンモニア,石油ガス,塩素)の7品目 |
液化石油ガス |
C3とC4の炭化水素を主成分とするガス |
特殊材料ガス |
7種類,39品目の特定ガス |
・火災時にボンベが火炎にさらされると爆発する。
・ボンベに強い衝撃を与えると爆発することがある。(アセチレンや酸化エチレンによくおこる。)
・可燃性ガスの急激な漏洩によって室内に充満したガスが爆発する。
・毒性ガスの噴出によって高濃度のガスを吸入すると,失神,即死する恐れがある。
・毒性ガスの低濃度,長期の吸入は慢性疾患の原因になる。
・毒性のないガスでも急激な漏洩は酸欠状態になり死亡することがある。
・自燃性,自己反応性のある特殊材料ガスは取扱いを誤ると火災,爆発を起こしやすく災害も大きくなる。
運 搬
・バルブを点検。保護用キャップを必ず付ける。
・ボンベ運搬用の手押し車を使用する。運搬中は転げ落ちたりしないようにしっかり固定すること。積み下ろしは静かに丁寧に行なう。一人で担ぎ上げたりしないこと。
貯 蔵
・ガスの種類によって区別して貯蔵すること。酸素と水素,可燃性ガスを一個所に貯蔵してはいけない。ボンベは立てて固定する。
・液化ガス,アセチレンは必ず立てて保管。
・酸素及び可燃性ガスボンベの近くには自然発火性や引火性の強い薬品を置かない。
・貯蔵室内は火気厳禁。ガスが漏れても滞留しないように換気に注意。
・ボンベは常に40℃以下,−15℃以上の所に保管。直射日光,風雨の当る所,湿気の多い所,耐食性薬品の近くには置かない。
・重量物落下等の恐れのない場所を選ぶ。
飯田研での貯蔵方法
・実験室には必要最低限の燃料ボンベしか置かない。
・使用しないボンベは気燃庫に貯蔵する。この際、バルブの締まりを確認し、保護
キャップを用い、ボンベタグを付けること。
・気燃庫に保管する際、残量(どの程度使用したか)をボンベタグに書いておくと
他のチームが使用する際に使いやすい。
使 用
・ボンベが倒れたり,移動しないように鎖やアングルでしっかりと固定して使用。
・バルブの開閉は常に静かに注意深く。急激に開いたり,無理な力で開いてはいけない。
・調整機,導管はそのガス専用のものを使い,導管の接続は必ず締めつけ金具を用いる。
・配管に用いるゴムホース、銅管、ステンレス管は、長すぎず短すぎず、適当な長さで使用する。
・接続部分のガス漏れは石鹸水を用いて検査し,チェックを行う。バルブからガス漏れがある場合は,屋外にボンベを出し,室内での爆発,中毒を防ぐ。
・ボンベからボンベへのガスの移し替えは絶対にしてはいけない。
・ボンベを温める必要のある時は,40℃以下の温湯,熱い湿布等を用いて決して直火などを用いてはならない。
・ガスの使用を一時中止する時は,調整器の操作だけでは不完全。必ずバルブを閉じ,実験装置と調整器の接続をはずしておく。
・実験終了時にバルブの締まりを確認すること。さらに、配管等にへたりがないかチェックする。
その他
ガスを使い終わって容器を返済または詰替えをする時は必ずバルブを閉じ,ガスが若干残った状態で業者に渡す。ガスを完全に消費してしまうと再充填の際に空気が混入する恐れがある。長期間放置し容器検査に出しえないボンベ,容器検査に合格しなかったボンベを廃棄する場合は,必ず高圧ガス取扱業者に依頼する。
高圧ガス管理簿を
高圧ガスおよびボンベの管理について以下に述べる。
@高圧ガスの管理簿で、現在所有の高圧ガスの種類、ボンベの本数が分かる。
A高圧ガスの管理簿に,常時保管場所,ガス名,ボンベの色,メーカー製造番号,製造または検査年月日,TP(テスト圧力),FP(常用圧力),借用年月日などを詳しく記入すること。
B『ボンベタグ』に,必要事項を記入し,カードケースに入れてボンベに取り付ける。
C気燃庫に入れるときは『ボンベタグ』に気燃庫に入れる年月日を記入し、残量をだいたいで記入する。
D返却時は,ボンベから『ボンベタグ』をはずす。
E35棟の屋外に空ボンベの紙をはり,寝かしておく。
F空ボンベは早急に業者にボンベを取りに来るように連絡する。
G高圧ガス管理簿の該当ページに返却日,返却者のサインを記入し,ページ全体赤ペンで×印を付ける。
次ページに高圧ガス購入時に必要な高圧ガス管理簿、ボンベタグの書き方の例を示す。
『高圧ガス管理簿』の記入例(購入時)
図14.1 『高圧ガス管理簿』の記入例(購入時)
『ボンベタグ』の記入例
図14.2 『ボンベタグ』の記入例
酸素
油脂類に触れるだけで酸化発熱し,燃焼,爆発にいたる危険性があるので,容器,器具類に油分を付けたり,付近に置いたりしないように注意する。
・調整器等は酸素専用のものを用いる。
・圧力計は“禁油”と表示された酸素用を使用する。
・酸素を空気と同じと考えてはいけない。
・水素等の可燃性のボンベを近くに置かない。
水素
急激に放出すると火がなくても発火することが多い。水素と空気の混合物の爆発範囲は水素の4.0−75.6vol%で広範囲である。
・換気の良い場所で使用するか,導管で室外の大気中に放出するのが肝要である。
・漏れ試験は水石鹸で行う。
・火気厳禁。
・使用後,装置は窒素ガス等の不活性ガスで置換する。
塩素
微量でも目,鼻,喉などを強烈に刺激する。
・調整器等は専用のものを使用する。
・水分があると腐食するので,使用の都度水分を拭取る。それでも,腐食するので,6か月以上充瓶のまま保存しない。
アンモニア
目,鼻,喉等を刺激する。
・凍傷にかからぬように留意する。
・水に吸収されやすいので,注水のできる場所で取扱い保存する。
アセチレン
非常に着火性が高く,燃焼温度が高い。時には分解爆発もする。
・容器は直立させて置く。
・火気厳禁。
・漏れに注意する。
・調整器出口で1kg/cm2以上の圧力にならないようにして使用する。
・バルブは1.5回転以上開けない。
・空気と混合した時の爆発範囲はアセチレン2.5〜80.5vol%である。
可燃性ガス
・火気厳禁。
・消化設備を設ける。
・電気設備には細心の注意が必要である。
・静電気の除去が必要である。
・使用の前後に,装置内を不活性ガスで置換する。
・可燃性ガスと空気の混合物の爆発範囲は広いものが多いので注意する。
・換気に注意する。
毒性ガス
・毒性ガスに対する十分な知識をもって扱う。
・防毒面,設備や避難場所等には万全を期する。
・換気及びボンベの劣化には注意する。
・長期保存は避け,業者に引取ってもらう。
不活性ガス
・不活性ガスではあるが高圧のため慎重に扱う。
・大量使用の際には換気に注意する。
JIS B.8241:温度35℃で圧力が1kg/cm2以上の圧縮ガス,15℃で圧力2kg/cm2以上の溶解ガスまたは全ての液化ガスを充填する内容積0.2l以上100l以下の継ぎ目の無い鋼製容器についての規定。内容積5l以下のものは小容器,5l以上のものは中容器と区別される。
表14.3 高圧ガスの容器の塗色と文字の色
高圧ガスの種類 |
容器の塗色 |
ガスの名称を示す文字の色 |
ガスの性質と それを示す文字の色 |
窒素ガス 水素ガス 液化炭酸ガス 液化アンモニアガス 液化塩素ガス アセチレンガス 可燃性ガス 可燃性,毒性ガス 毒性ガス その他のガス |
黒色 赤色 緑色 白色 黄色 褐色 鼠色 鼠色 鼠色 鼠色 |
白色 白色 白色 赤色 白色 白色 赤色 赤色 白色 白色 |
「燃」白色 「燃」赤色,「毒」黒色 「毒」黒色 「燃」白色 「燃」赤色 「燃」赤色,「毒」黒色 「毒」黒色 |
高圧ガスを使用する時に必要な圧力に減圧するために用いるものである。
取扱いはメーカー等によって異なるが以下に基本的な取扱い方を示す。
基本的なレギュレータの取り扱いとして、
@圧力調整バルブが緩んでいることを確認。
A流量調節バルブが閉っていることを確認。
B流量測定器の直前のバルブが閉じていることを確認。
Cボンベ側のバルブを開け、1次圧を調節する。この際バルブはゆっくり回すこと。
D圧力調整バルブで2次圧を調節する。この際バルブはゆっくり回すこと。
Eボンベ、レギュレーター間でのガス漏れのチェックを行う。
F流量調整バルブをゆっくり開ける。
Gレギュレーター、配管間の漏れチェックを行う。
H流量測定器の直前のバルブを開き、流量測定器によって、必要なガス流量が確保されるか確認する。
レギュレータ使用チームが管理する。レギュレータの管理について以下に述べる。
@レギュレータの管理簿としてI:\BINRAN\01card\REGURATE.xlsとしてデータベース化してある。
Aレギュレータの管理簿に,番号,最大一次圧力,最大二次圧力,所有チーム名,設置場所,使用ガス種類,ねじの方向,製造会社の項目を正確に記入すること。
B飯田研所有の各レギュレータには,番号が付けられておりその番号に従って管理している。新規購入した場合には,レギュレータの管理簿にその番号を登録し,テプラで作成した番号シールを,レギュレータ本体に貼り付けること。
注意:・レギュレータは決まった燃料にしか用いないこと
使っていないレギュレータはYAMMER部屋(35−117)の棚に落ちないようにしまっておくこと。
図14.3 『レギュレータ管理簿』の記入例
圧力調整器の袋ナットと容器弁のネジがあわない場合は適当なコネクターを用いて両者を接続すること。また,圧力調整器の出口ジョイントには配管の種類によって適当なものを選ばなければならない。
高圧ガスは,その貯蔵,取扱いには十分な注意が必要である。また,購入には,法規で定められ,消防署に許可を受けている範囲を守るように十分留意する。
高圧ガスが実験上必要な場合には,教員の許可を受け,その指示のもとに保管する。
高圧ガスの購入の際は,『高圧ガス管理簿』に記入し,『ガスボンベタグ』を容器につける。
次に高圧ガスの諸性質をまとめて示した。安全対策の第一はまず取扱うガスの性質を知ることである。表にない特殊なガスを使用する時は,その性質を十分に調べてから使用しなければならない。
表14.4 高圧ガスの性質
種 類 |
名称 ()内は容器色 |
気体 比重 空気=1 |
沸点 (℃) |
融点 (℃) |
爆発範囲 (vol%) |
発火点 (℃) |
腐食性 |
臨界 温度 (℃) |
臨界 圧力 (atm) |
圧 縮 ガ ス |
アルゴン 一酸化炭素 空 気 酸 素(黒) 酸化窒素 水 素(赤) 窒 素 ネ オ ン ヘリウム メ タ ン |
0.976 1.000 1.1049 1.27 0.0695 0.9669 0.67 0.1380 0.554 |
-185.7 -192.2 -191.5 -182.9 -151 -252 -195.8 -245.9 -268.9 -161.4 |
-189.2 -205.0 -213〜 225 -218 -163.7 -259 -210.0 -248.6 -272.1 -182.7 |
12.5〜74 4.0〜75.6 5.0〜15.0 |
669 585 537 |
無 無 無 無 無 無 無 無 無 無 |
-122.4 -139 -140.7 -118.4 -93 -239.9 -147 -228.7 -267.9 -82.1 |
48.0 31.5 37.2 50.1 64 12.8 33.5 26.9 2.2 45.8 |
|
アンモニア(白) 亜酸化窒素 二酸化硫黄 エチレン 塩化水素 ホスゲン ブタジエン ブチレン フッ化水素 フッ素 フレオン-22 プロパン プロピレン 硫化水素 塩素(黄) 二酸化窒素 酸化エチレン シアン化水素 炭酸ガス(緑) アセチレン(褐) |
0.58 1.529 2.2629 0.975 1.392 1.87 1.91 0.988 1.32 1.41 1.56 1.49 1.175 1.557 1.52 0.96 1.156 0.90 |
-33.4 -88.5 0.0 -103.8 -85 8.3 -4.4 -6 19.4 -188 -40.8 -42.8 -47.7 -60.0 34.1 21.3 10.7 25.0 |
-77.7 -90.9 -15.5 -169.5 -112 -104 -113 -146 -92.3 -223 -160 -189.9 -185.2 -82.9 -100.9 -9.3 -111.3 -13.4 -78 -81.8 |
15〜28 2.7〜3.6 2.0〜12 1.8〜9.7 2.2〜9.5 2.4〜11 4.0〜44 3.6〜80.0 5.6〜10 2.5〜80.5 |
651 450 429 323 466 410 260 429 537 299 |
有 無 有 無 有 有 無 無 有 有 無 無 無 有 有 有 無 無 無 無 |
111.3 36.5 157.5 9.2 51.4 182 152 144.7 230.2 155 96.4 69.8 91.8 100.4 144.0 153.0 195.8 183.5 31.0 35.5 |
132.3 71.7 77.8 50.0 81.5 56 42.7 39.5 25.0 48.5 42.0 45.6 88.9 100 7.2 53 72.8 61.6 |
大学の教育・研究活動に伴い種々の廃棄物が排出される。単なる紙屑,ガラス等の無害なものや,有害物,有害物の付着した紙屑もある。有害な廃棄物は,定められた場所に集積することで排出者の役割は終わる。しかし,有害なものは理工学部では「実験廃液等」として分別収集して,年数回,学外業者に委託して次のように処理している。有害物質の処理についての最終責任は,たとえ委託処理を行うにしても,あくまでも使用者にあるので,このことを念頭において,廃棄物の的確な分別と処理を行うこと。