最新情報
2025年6月22日
ミラノATCM南極ガバナンスセミナー/SCAR Ant-ICONワークショップ参加報告


第47回ATCMに合わせて、Kobe PCRCとKOPRI、そして開催地からイタリア極地研究所(CNR-ISP)の共催にて「条約制度に基づく南極ガバナンスのあり方」という国際セミナーを、6月22日にミラノ・メリアホテル会議室で開催しました。パネリストに元SCAR会長のチャウン教授、米国南極外交をリードしてきたブルーム氏などを招へいし、若手研究者の参加も得て、南極条約体制内外の挑戦にいかに条約に基づいて対応していくかにつき、2つのパネルにて議論を展開しました。その様子はYouTube動画で閲覧可能です。


柴田センター長は、ミラノATCM及びCEP(6月23日〜7月3日)を、ASOCの招へい代表団の一員として傍聴し、各国代表団や専門組織と南極ガバナンスの現状と課題につき意見交換してきました。上記セミナーでも話題となった「透明性」が、ミラノATCMの中心的課題となり、最終報告書には24回も「透明性」の用語が出ています。ただ「透明性」は異なる文脈で議論の対象となっており、第1に、南極活動それ自体のあり方を条約締約国間で確認しあう方策として、査察や電子情報交換システム(EIES)の改善、軍事要員や備品の報告義務の確認などが行われました。環境影響評価(EIA)のより効果的な活用や南極ジオエンジニアリング実験の適否の議論でも、透明性がキーワードになっていました。第2に、会議体の公開度と会議文書の公表という文脈と共に、メディアにどこまで会合へのアクセスを認めるか、メディア向け情報発信をどう高めるかという文脈でも「透明性」が多く議論されました。Kobe PCRCでは、2026年5月のヒロシマATCMに向けて、この透明性の議論をフォローしていきます。


その後、柴田センター長はフランス・パリに移動し、SCARの異分野共同研究プロジェクトAnt-ICON(南極保全に向けた統合的科学的情報提供)のワークショップ(7月7日〜9日)において、「ミラノATCMでの議論結果:南極保全における政策・法・科学の接点(PoLSciNex)からの視点」という基調講演を行いました。
PCRCセンター長・柴田明穂
2025年5月12日
タスマニア大学共同若手研究者イニシアティブによる調査研究とワークショップを開催しました!
過去の研究活動
2025年5月12日
タスマニア大学共同若手研究者イニシアティブによる調査研究とワークショップを開催しました!


2025年4月29日~5月8日、日本学術振興会(JSPS)研究拠点形成事業「地球益実現に向けた社理連携による南極ガバナンス国際研究拠点の構築」のもと、柴田センター長とともに、來田真依子准教授(大阪大学)、岩間文香氏(神戸大学大学院博士前期課程)が交流相手国拠点機関であるタスマニア大学(UTAS)を訪問し、若手研究者イニシアティブによる調査研究とワークショップを実施しました。この取組みの目的は、南極ガバナンス研究に携わる若手研究者のグローバルな国際研究交流ネットワークを構築することにありました。


企画の目玉となったのは、5月2日、來田准教授と岩間氏によって開催されたワークショップ「南極若手研究交流会」です。会場のUTAS 海洋南極研究所(UTAS-IMAS)には、南極ガバナンスに関心をもつ豪州の若手研究者や学部生が15名集まりました。ワークショップは岩間氏による論点提起から始まり、南極ガバナンスに対する若手研究者の参画や、将来的な学術交流の機会について検討していく必要性が確認されました。その後、グループごとの関心に基づくテーマ設定を行った上で、南極観光規制や南極での活動に関するアウトリーチの在り方、南極の調査研究におけるジェンダーの問題等について活発な議論が行われました。また、豪州側のポスドクや大学院生により、南極の海洋環境問題や観光活動等に関する研究発表が為され、日本チームとの質疑応答が交わされました。
また、5月6日には來田准教授による資料及び情報収集の一環として、南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)事務局を訪問し、CCAMLRによる寄港国措置や漁獲証明制度の実施状況と今後の展望について、David Agnew事務局長と意見交換を行いました。


このほかにも、日本チームはUTASの学術コミュニティ関係者と議論を行う様々な機会に恵まれました。5月1日には、拠点コーディネーターのTony Press客員教授、参加研究者であるJeff McGee教授及びIndi Hodgson-Johnston上級講師、そしてUTAS南極ガバナンス修士課程コースの院生たちとともに、日本の南極ガバナンスへの取組の歴史に関する意見交換を行いました。また、同日夕刻からは参加研究者のElizabeth Leane教授も加わり、南極ガバナンスにおける日豪の2国間関係に焦点を当てた議論が行われました。
5月5日、UTAS-IMASが継続的に開催している教員懇談会に招かれ、豪州側参加研究者のPeter Lawrence客員教授やBruno Arpi准教授(アデレイド大学)らとともに、JSPS拠点形成事業で今後扱う各種論点についてディスカッションの場が設けられました。議論の中では、国際的なガバナンス形成における若手研究者の役割や、南極海洋生物資源保存委員会の漁獲証明制度が非加盟国に与える影響といった論点に関する示唆が得られました。