JSPS研究拠点形成事業 地球益実現に向けた南極ガバナンス研究(2025〜2030)

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JSPS研究拠点形成事業
地球益実現に向けた南極ガバナンス研究 (2025〜2030)

お知らせ

  • 2025.07.31
    本事業のキックオフ・セミナー開催(東京・神戸)
  • 2025.06.22
    ATCMと連動させた南極ガバナンスセミナー開催(イタリア・ミラノ)
  • 2025.06.15
    本事業の専用ウェブページを公開
  • 2025.05.02
    本事業の若手研究者イニシアティブ企画(ホバート・タスマニア)
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事業の概要及び研究内容

この事業では、南極域が現在そして今後100年にわたって直面し続ける2つの危機に、的確に応答できる国際的且つ学際的な南極ガバナンス研究拠点を構築します。2つの危機とは、第1に気候変動を主因とする南極氷床・海氷・海洋・生態系の激変と、そして第2にグローバル・サウスによる「多極化した世界秩序」の主張です。今後の海面上昇の約1/4が南極起因であると言われており、南極ガバナンスのあり方は、今やグローバルな関心事です。こうした危機の本質を地球科学と社会科学とを連携させて明らかにし、それら危機に的確に対応できる南極ガバナンスの強化策を、地球益を実現するという観点から提言します。

具体的な研究トピックとして、(i)南極氷床融解とそれを保全する工学的構想の是非、(ii)コウテイペンギンを含む南極生態系の保全、(iii)平和利用の下での南極科学調査の推進、特に南極科学技術・データのデュアルユーズの問題、(iv)南極由来の遺伝資源の保全と持続的利用、(v)増え続ける南極観光活動の適切な管理を扱います。加えて、この事業では、より根本的、課題横断的、理論的課題として、例えば、「プラネタリー・バウンダリー論」「地球システム法論」「グローバル環境法論」「ガバナンスレジーム論」なども積極的に研究していきます。本事業は100年先の南極ガバナンスを構想しており、今後100年間国際研究交流が継続できるように、若手研究者養成と大学院教育にも力を入れています。

本研究の学術的成果は、新たに得た学術的知見を基礎に具体的なガバナンス課題に対する解決策を提言する「ホワイト・ペーパー」を起案し、広く関係ステークホルダーに向けて発表します。特に、南極ガバナンスに係わる政策的提言は、2026年5月広島市で、2027年韓国で開催される南極条約協議国会議(ATCM)に向けて作成され、研究成果の社会実装を図ります。

研究協力拠点と参加研究者

この事業では、南極ガバナンス研究が多国間研究交流を通じて展開すべき必然性があることを認識し、日本・豪州・韓国の3研究機関がそれぞれ特徴的な南極活動の歴史と得意研究分野をもっていることに着目し、これを有機的かつ相互補完的に組み合わせてネットワークを構築します。日本は、1959 年南極条約のアジア唯一の原署名国であり、1957年に昭和基地を設置して以降、国立極地研究所(NIPR)を中心とした地球科学研究が綿々と続いています。

柴田 明穂

神戸大学教授 PCRCセンター長

ジェームズ・アンソニー・プレス

タスマニア大学 海洋・南極研究所 客員教授

シン・ヒョンチョル

KOPRI 所長

本事業の日本側拠点である神戸大学には、2015年に大学院国際協力研究科内に極域協力研究センター(PCRC)が設置され、南極条約体制に関する世界最先端の国際法政策的研究が行われており、米国、オランダ、ドイツ、アイスランド、フィンランドなど欧米の極域国際法研究者との強いネットワークを有しています。一方で、広域化・多様化する南極ガバナンス的課題に効果的に対処するために、豪州タスマニア大学海洋南極研究所(UTAS-IMAS)と韓国極地研究所(KOPRI)とタッグを組んで研究を進めます。特にUTAS-IMASは、クレイマント諸国を含む南半球の主要南極国研究者と強いネットワークを持っており、KOPRIは、その基地が隣接する中国やその他インド、マレーシア、トルコなど、アジア諸国と強い南極研究者ネットワークを持っています。日豪韓の多国間交流により、上記研究トピックについて、必要となる学術的知見と地域的カバーを確保し、欧米・南半球・アジア研究者を加えたグローバルな学術ネットワークを通じて研究成果を出すことが可能となります。また本事業では、日本国内では、NIPRと共に、北海道大学低温科学研究所と上智大学が国内協力機関として参画し、オーストラリアからはウーロンゴン大学が協力機関として参画しています。協力研究者として、PCRCの下にドイツ、オランダ、フィンランド、アイスランドの研究者、UTASの下にニュージーランド、アルゼンチン、チリの研究者、KOPRIの下に中国、インド、マレーシア、トルコの研究者が加わり、真にグローバルな研究ネットワークが築かれています。