HyTecについて
組織概要
1. HyTec設立までの経緯
世界的な地球温暖化の影響を最小限に抑え、2050年までに「カーボンニュートラル社会」を実現することが喫緊の課題となっています。私たちは、神戸大学先端融合研究環の重点研究チーム(2014~2018年度、海洋再生可能エネルギーと水素エンジニアリングへの展開)、開拓プロジェクト(2019~2021年度、海洋再生可能エネルギーによる発電・水素製造システムの研究開発)の活動を通じて、液体水素技術や洋上風力エネルギー評価技術等に関する教育研究を推進しました。また、オープンイノベーション事業(2019~2023年度、海事・エネルギー分野)の支援を受けて共同研究・受託研究等の活動を強化するとともに、水素技術勉強会(現在、水素・未来エネルギー技術勉強会)との連携を通じて産官学コンソーシアムの拡大に注力しました。そして、水素を主要なエネルギーキャリアーと捉え、多様性の観点から革新的「未来エネルギー技術」を総合的に研究する「神戸大学 水素・未来エネルギー技術研究センター(HyTec)」が、2023年11月1日に設立されました。
2. HyTecの部門構成と役割り
私たちは、「未来エネルギー」を未来の「カーボンニュートラル社会」を実現するために必要なエネルギーと捉え、再生可能エネルギー、水素エネルギー、電気エネルギー、熱エネルギー、振動エネルギー等の革新的「未来エネルギー技術」の創出と世界的規模での社会実装を目指します。そこでHyTecは、神戸大学のコア技術である、海洋気象学に始まる再生可能エネルギー技術、極低温技術に始まる水素エネルギー技術、電気工学・熱工学等の多様なエネルギー基盤技術に基づいて、「再生可能エネルギー技術研究部門」、「水素エネルギー技術研究部門」、「マルチエネルギー技術研究部門」の3つの研究部門を配しました。各部門の構成員は4名で、主に海事科学研究科と工学研究科の教員が所属しています。
「再生可能エネルギー技術研究部門」では、洋上風況マップの高精度化、洋上風況調査手法の確立、浮体式洋上発電・水素製造モデルの検討、むつ小川原洋上風況観測試験サイトにおけるオープンラボラトリー活動等を行います。「水素エネルギー技術研究部門」では、液体水素用計測機器(液面計、流量計など)の開発、小型水素液化機/再凝縮機およびオルト・パラ水素変換触媒の開発、液体水素の熱流動特性の解明、深江キャンパス・液体水素試験サイトにおけるオープンラボラトリー活動等を行います。「マルチエネルギー技術研究部門」では、再生可能エネルギー由来水素(グリーン水素)の製造および利活用に寄与するパワーエレクトロニクス回路・応用電源技術の開発、災害時のレジリエンス機能強化、マルチエネルギーシステムの最適化等を行います。
3. HyTecの強み・特色
HyTecの強みは、共同研究・社会実装等を通じた産官学連携を強力に推進する、オープンラボラトリー体制として、むつ小川原洋上風況観測試験サイトおよび深江キャンパス・液体水素試験サイトを有していることです。前者は日本初の洋上風況観測専用利用施設で、後者は国内の大学では唯一の液体水素専用実験施設です。また、水素を主要なエネルギーキャリアーと捉え、水素の製造、貯蔵・輸送、利活用の全てを対象として、多様性の観点から「未来エネルギー技術」を総合的に研究する組織は、世界的に見ても非常にユニークです。
HyTecの特色は、神戸大学カーボンニュートラル推進本部やSDGs推進室との連携のみならず、オープンラボ・国際規格化推進や社会システム評価技術研究等により、文系・理系の垣根を越えて、神戸大学が目指している「知と人を創る異分野共創研究グローバル拠点」の構築に大きく貢献することです。また、水素・未来エネルギー技術勉強会(産官学の会員約80)を主宰し、研究会・セミナー・シンポジウム・国際ワークショップの開催等を通じて産官との連携や共創の環を広げ、「水素・未来エネルギー技術」の世界的研究拠点を目指します。

神戸大学 水素・未来エネルギー技術研究センター
(HyTec: Research Center for Hydrogen Energy Technology, Kobe University)
〒658-0022 神戸市東灘区深江南町5-1-1
お問い合わせ連絡先
神戸大学深江キャンパス 海事科学研究科総務企画グループ
TEL: 078-431-6206
E-mail: gmsc-soumu [at] office.kobe-u.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
センター長挨拶
神戸大学先端融合研究環の重点研究チームや開拓プロジェクトの活動を通じて、またオープンイノベーション事業の支援による共同研究・受託研究等の推進や勉強会活動を通じて、トップダウン形式により2023年春頃からセンターの設立準備が始まりました。部局内での長年の実績を活かしてセンターを立上げ、着実に一歩ずつ進めて行くことを想定していましたが、カーボンニュートラル、水素・未来エネルギー社会への急速な動きや社会ニーズの高まりに伴い、また学内からの理解や期待も受けて、全学センター設立にチャレンジすることになりました。センター構成員(12名:3部門、各部門4名)の確保、学内規則の整備、教育研究組織整備および基盤的設備に係る概算要求等、設立準備作業に追われながらも、2023年11月1日に「神戸大学 水素・未来エネルギー技術研究センター(HyTec)」が設立されました。その日には「京都・大阪・神戸3大学シンポジウム」(日本経済新聞社等主催)が開催されました。「関西の産学が創る脱炭素社会」をテーマとして、脱炭素社会の実現に向けた新技術や産学連携のあり方が議論され、HyTecが国内大学で唯一、液体水素の実験棟を有するセンターであることが紹介されました。
HyTecの組織的活動開始にあたり、2024年3月1日に神戸大学統合研究拠点においてキックオフシンポジウムが開催されました。シンポジウムのテーマは「水素・未来エネルギーが創るカーボンニュートラル社会 —先端技術研究と産官学連携からの挑戦—」とし、第1部講演会、第2部パネルディスカッションを行い、165名の皆様にご来場いただきました。HyTecの組織的活動は未だ始まったばかりですが、むつ小川原洋上風況試験サイトおよび深江キャンパス・液体水素試験サイトにおける現場レベルでの研究活動が進展しており、各方面からのニーズが急拡大しています。そのため、早急に「オープンラボ・国際規格化推進部門」を設置し、オープンラボの立上げおよび管理運営体制の構築を進める必要があります。この体制構築が整えば、「水素・未来エネルギー技術」に関する共同研究・受託研究等の推進、革新技術の社会実装、社会実装を通じた産官学連携の拡大につなげることが可能となります。また、「水素・未来エネルギー技術」に関する革新技術の国際規格化を推進することにより、革新技術の世界的規模での社会実装、国際プロジェクトへの参加に伴う国際連携強化につなげることが可能となります。新たな部門の設置に向けて鋭意活動して参りますので、皆様のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

武田 実
部門およびメンバー概要
センターメンバーの一覧表を以下に示します。
うち「再生可能エネルギー技術研究部門」、「水素エネルギー技術研究部門」、「マルチエネルギー技術研究部門」の3つの研究部門の活動内容およびメンバー詳細については「研究部門紹介」および「メンバー」を参照してください。
その他のメンバーは更なる活動展開、新部門発足の準備活動等を実施しており、詳細については「勉強会活動(準備中)を参照してください。
水素・未来エネルギー技術研究センター(HyTec)
センター長 武田 実 教授、海事科学研究科海事科学専攻教授(兼)
副センター長(兼)大澤輝夫 海事科学研究科海事科学専攻教授
客員教授 駒井啓一 学術研究員、OI機構海事エネルギー分野CM(兼)
IGAS-HyTec事務局長 繁森 敦 学術研究員
水素エネルギー技術研究部門
部門長 武田 実 教授
助教(兼) 前川一真 海事科学研究科海事科学専攻助教
特命助教 デミトロデミルスキー
海事科学研究科海事科学専攻特命助教(兼)
助手(兼) 佐藤 更 海事科学研究科海事科学専攻助手
客員教授 駒井啓一 学術研究員、OI機構海事エネルギー分野CM(兼)
IGAS-HyTec事務局長 繁森 敦 学術研究員
藤川静一 教育研究補佐員
再生可能エネルギー技術研究部門
部門長(兼) 大澤輝夫 海事科学研究科海事科学専攻教授
准教授(兼) 市橋祐一 工学研究科応用化学専攻准教授
准教授(兼) 村川英樹 工学研究科機械工学専攻准教授
助教(兼) 藤原 泰 海事科学研究科海事科学専攻
マルチエネルギー技術研究部門
部門長(兼) 三島智和 海事科学研究科海事科学専攻准教授
教授(兼) 浅野 等 工学研究科機械工学専攻教授
准教授(兼) 鶴田宏樹 バリュースクール准教授
特命助教(兼) 釜阪紘平 先端バイオ工学研究センター特命助教