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ウェルビーイング推進本部

部門・メンバー Department & Member

センター長からのご挨拶

 最近ウェルビーイングという言葉を日常でもよく聞くようになりました。しかしウェルビーイングが使われる文脈も、意味内容も実に多岐にわたり、何がウェルビーイングなのか、という定義も曖昧なままに便利に使われています。
 世界保健機関(WHO)憲章(1948)の前文の中で、“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” (健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。(訳:日本WHO協会)、という高らかな宣言や、SDGsの17の目標の3番目には“Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages(あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する)”が目標として掲げられています。
このように国を超えて実現を求められている重要な概念であることは間違いありません。
ウェルビーイングは健康との関連づけられることが多く、もちろんすべての人が健康である社会の実現は重要なことですが、逆に健康でないからといって、必ずしもウェルビーイングが低いわけではないと思います。また感染症を恐れて、外出を自粛すると、感染症にはかからないかもしれませんが、それでウェルビーイングが高いといえるのでしょうか。
 ウェルビーイングは日本では幸福と訳されることが多いですが、個人各人が幸福を求めれば、ウェルビーイングの高い社会が実現するのでしょうか?近代は、便利さや快適さを追求し、現在は多くの人が100年前と比べると想像できないような便利で快適な暮らしを享受しています。しかし現代においても、貧困な飢えで苦しむ人々がいる一方、先進諸国では大量のフードロスが生じている。地球温暖化が原因で異常気象が増加しているといわれる一方で、冬の家の中の気温差は身体に悪いので、家全体を温めましょう、という。つまり個人の幸福の追求が他の人の犠牲につながっていたり、人間の快適さのために、自然環境が破壊されているのです。
 現代はこういう人間と環境の最適解のない中でのそのバランスが問われている時代です。ウェルビーイングの実現は個人個人の幸せを考えるだけでなく、人を取り巻く環境や社会も同時にウェルビーイングを追求するのでなければ達成できない、と考えています。そして社会や環境のウェルビーイングに心を砕くことができる人間こそ、ウェル=ビーイング、善き生、を実現する存在なのではないでしょうか。

センター長 片桐 恵子

センターの構成

健康領域研究部門

健康は遍く人類が求めるものであり、ウェルビーイング実現の根幹を成します。本研究領域では、人間の健康を保つための学問である保健学を専門とする研究者が中心となり、健康の基盤となる知識の集積や技術の開発を行います。

メンバー紹介

副センター長・健康領域研究部門長

森山 英樹

専門:健康科学・リハビリテーション科学・理学療法学

研究テーマ:健康のために運動がよいことは広く認知され、多くの方が実践されています。しかし、運動がなぜ健康によいのか、さらに種類と部位さえも問わず病気を予防や改善できるのか、意外なほど分かっていません。このことを解明すべく基礎的および臨床的研究を行っています。

石井 豊恵

専門:看護技術・看護教育

研究テーマ:治療・療養される患者さんのウェルビーイングを保証するためは適切な看護を実施することが重要です。看護実践現場で提供される看護ケアの種類は多岐にわたり、患者さんの状態に合わせて実施されます。患者さんやご家族の満足はもちろん、実施したケアが適切かどうか定量的な評価が必要です。ケアを受けている患者さんの状態について何をどう測るか、看護者の技術をどう測るか、そしてそれらをどのように活用すると良いのかに焦点を当て、研究をしています。

園田 悠馬

専門:神経病理・リハビリテーション科学・作業療法実践学

研究テーマ:認知症、脳卒中、神経難病(筋萎縮性側索硬化症・多系統萎縮症・パーキンソン病)、慢性痛(肩こり・腰痛・頭痛)といった主に高齢者に多く、脳の変性をもつ方々あるいはリスクのある方々の肉体的・精神的・経済的な健康状態、Quality of Life、労働生産性の低下を予防・改善するリハビリテーション手法の開発を目指したウェルビーイング研究を行っています。

発達領域研究部門

私たちの寿命はこの70年で30年以上伸び、人生100年ともいわれるようになりました。生まれてから死ぬまでの長期にわたるプロセスの中で、ウェルビーイングのあり様やウェルビーイングに影響する要因は変化していくと考えられます。発達研究領域では、ライフスパンの各段階におけるウェルビーイングの特徴や影響要因を、調査、実験、縦断研究といったさまざまな手法を用いて明らかにします。また、得られた成果を産官民と連携して社会実装することで、各世代に応じたウェルビーイングの実現を目指します。

メンバー紹介

センター長

片桐 恵子

専門:社会老年学・社会心理学

研究テーマ:最近人生100年という言葉にリアリティを感じるようになりました。しかし、急激な長寿化の進展に、社会も人々もどう生きたらいいのか戸惑っています。引退期から元気なシニアの時期をサードエイジといいますが、この時期をいかに生きるかが幸福な老いには重要だと考えています。サードエイジの就労や社会参加、市民参加による社会参画のあり方、またそのような参画を支える雇用や社会システムについての研究を行っています。

副センター長・発達研究領域部門長

増本 康平

専門:認知心理学・老年学

研究テーマ:どうすれば老いに伴う認知機能の衰えに適応できるのでしょうか?人生の最後に幸福であるために何が重要なのでしょうか?このような疑問を明らかにすることを目指して、記憶、感情、意思決定という認知的な側面と、ひととのつながりといった社会的側面から研究を実施しています。

原田 和弘

専門:健康スポーツ論・老年行動学

研究テーマ:健康づくりにおける運動習慣の大切さは、すでに多くの人々が知っています。しかし、「継続は力なり」とは言いますが、運動は、日記や英会話、早寝早起きなどとともに、つい「三日坊主」になりがちな行動の代表格です。なぜ多くの人は運動の習慣化に挫折してしまうのでしょうか?どうしたら、運動を続けられるようになるのでしょうか? 私は、主に高齢者を対象に、このような疑問に答えることを目指した研究を行っています。

環境領域研究部門

健全な環境は人間のウェルビーイングに欠かせませんが、可視化(visualization)が難しいことから十分な定量的理解に至っていません。そのため、環境を保全することの政策的合意形成が難しく主流化(mainstreaming)が不十分になります。環境領域は、環境が人間のウェルビーイングに与える影響について理論的・実証的に研究し、保全の価値や意義を明らかにすることで、制度や政策への反映や社会実装を目指します。

メンバー紹介

環境領域研究部門長

佐藤 真行

専門:環境経済学

研究テーマ:環境問題の多くは人間の経済活動によって引き起こされます。その解決には、環境問題の原因になっている経済メカニズムを分析することが有用です。ただし、環境問題の認識や理解には自然科学、経済活動を行う人間の理解には人間科学の研究が不可欠です。したがって、学際的なアプローチが不可欠となります。そのために、私は関連する他分野の研究者との共同研究を積極的に進めています。

亀岡 正典

専門:ウイルス学・国際保健学

研究テーマ:医療技術が発達した現在でも感染症は世界的な主要死亡要因の一つです。特に熱帯・亜熱帯の開発途上国においてその影響は深刻です。また、ここ数年のCOVID-19パンデミックは新たな感染症の出現が人間社会に大きな影響をおよぼすことを示しています。感染症の原因となる病原性ウイルスについて、複製機構等を解析する基礎的研究と、流行地域において薬剤耐性ウイルス出現状況などを調べる分子疫学的研究を行っています。

打田 篤彦

専門:社会心理学

研究内容:私たちが日々の暮らしを幸せに営むための基礎には、公共施設や制度、民間サービス、あるいは環境など様々な「当たり前」があります。その中で、現代の国際社会において日本で顕著に弱みとされているものの1つが、互いに信頼し助け合える人々のつながり(社会関係資本;social capital)です。この見えない社会基盤を私たちの生活の場にどう作っていけるかについて、学際的な研究と分野横断的な実践を試みています。

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