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高等学術研究院教員紹介
教員詳細
- 衣笠 太朗 kinugasa taro
- 国際文化学研究科 准教授

研究内容

ドイツと中東欧の境界地域に関する近現代史を研究しています。ここで言う境界地域とは、単に政治的境界の周辺ということに限定されない、言語、帰属意識、宗教などの面で内的な、もしくは隣接地域との分断を有する地域を指します。その意味で、20世紀半ばまでのドイツと中東欧の間には歴史的な経緯から典型的な境界地域が広がっていました。これらの地域は、とりわけ19世紀後半以降に、前近代的な秩序から国民国家への移行の中で、隣接する諸国家により争奪の対象となっていきます。私は、そうした歴史的文脈を意識しつつ、ナショナリズムのような集団的帰属意識の視座から、第一次世界大戦後の国境問題、分離主義運動、第二次世界大戦後の国境変動と住民移動に基づく社会の再編といったテーマを探究しています。また、神戸大学に着任してからは、神戸ユニオン教会を中心とする神戸市域の欧米系コミュニティに関する調査・研究にも研究チームの代表として取り組んでいます。これまで学術的には十分に明らかになっていなかった当該コミュニティの歴史について、一次史料の整理から分析までを行っています。
今後の抱負

現在進行中のテーマも含めて、私の学術的関心は「ドイツと中東欧の境界地域における戦後社会の変容」にあります。第一次世界大戦にせよ、第二次世界大戦にせよ、ドイツと中東欧の境界地域は、その戦後において大規模な国境変動、住民移動、そして集団的帰属意識の変容を経験しました。当該地域の歴史は、「戦後」という特有の状況において社会が根本的に変化していく過程を克明に伝える重要かつ顕著な事例であると考えられます。そして、その具体的な過程を詳らかにすることは、戦争そのもののみならず、「戦後」という一種の過渡期が何を人類社会にもたらしうるのかを示すという観点で貴重な研究となりうるでしょう。神戸の欧米系コミュニティに関する研究では、様々な一次史料をもとに、日本のキリスト教史や神戸の地域史を着実に更新できるような共同研究を目指しています。現在はこれらのテーマについてひとつずつ時間をかけて掘り下げている段階ですが、先に示したような大局的な展望を抱きつつ、それに関連する様々な研究テーマの開拓に挑戦していきます。
研究略歴
- 2025年6月
- 神戸大学大学院国際文化学研究科 准教授
- 2025年6月
- 神戸大学高等学術研究院 卓越准教授
- 2022年4月
- 神戸大学大学院国際文化学研究科 講師
- 2020年4月
- 秀明大学学校教師学部 助教
- 2020年3月
- 東京大学大学院総合文化研究科 博士後期課程 修了