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高等学術研究院教員紹介
教員詳細
- 田中 謙也 tanaka kenya
- 先端バイオ工学研究科センター 准教授

研究内容

生命活動は、電子をエネルギー準位の高い所から低い所へと移動させる過程で得られるエネルギーによって支えられています。これは水を高所から低所へ流す過程で発電する水力発電と似ています。さらに生命の秩序だった機能発現のためには、電子は必要なところへよどみなく必要な分だけバランスよく流れる必要があります。このバランスが崩れると活性酸素種の発生が起こり、酸化ストレス、細胞死につながります。まさに小さな細胞の中に精巧な電子回路が仕込まれているようです。どのように細胞は酸化還元バランスを維持しながら電子を適切に流しているのでしょうか。この問いに答えるためには、細胞内の酸化還元因子をシステマティックに分析、測定し、モデル化していく必要があります。そこでシアノバクテリアや大腸菌などの微生物をモデルに扱い、最新の質量分析計などを駆使した代謝物やタンパク質の網羅的な酸化還元状態定量を行っています。さらに酸化還元バランスや電子の流れは代謝、つまり物質生産に直結していることから、得られた知見を活かした微生物によるモノづくり技術への応用も行っています。
今後の抱負

細胞内で電子の運搬を行うプレイヤーはこれまで多くの研究で明らかにされてきました。しかし、それらがどのようにつながり、プレイヤーはどれくらい電子をもっており、どれくらい電子が流れているのかについての知見は、未解明の部分が大半です。電子の流れは直接可視化することはできないため、代謝の流れや酸化還元バランスの定量を通して酸化還元バランス維持メカニズムや電子の配分メカニズムの全容を明らかにしていきます。一方、微生物を使った有用物質生産技術は、古くは酒や味噌から始まり、現在ではプラスチック生産に至るまで、大きなポテンシャルを秘めています。しかし、CO2を直接固定化できる光合成微生物を用いたバイオ生産技術は、多くの場合コストが見合わず社会実装が困難でした。酸化還元バランスや電子の流れの観点からこの課題を解決することを目指します。また、老化に伴い電子の流れが変化し、疾患につながることも示唆されていることから、将来的には老化予防につながる技術にも発展させたいと考えています。
研究略歴
- 2025年4月
- 神戸大学先端バイオ工学研究センター 卓越准教授
- 2025年1月
- 神戸大学先端バイオ工学研究センター 講師
- 2022年8月
- 神戸大学先端バイオ工学研究センター 特命助教
- 2021年4月
- 日本学術振興会特別研究員PD(神戸大学)
- 2021年3月
- 大阪大学基礎工学研究科博士後期課程修了 博士(理学)