Policy-Law Science Nexus (PoLSciNex) 研究

2019年12月3日

南極におけるPolicy-Law-Science Nexus特別セッション概要報告

2019年12月3日、神戸大学極域協力研究センター(PCRC)は、オーストラリアのタスマニア・ホバートで開催された第12回極域法シンポジウム(Polar Law Symposium)において、南極研究科学委員会(SCAR)やタスマニア大学、チリ大学との共催で「Policy–Law–Science Nexus in Antarctica」研究に関する特別セッションを開催しました。本研究は、極域における国際法政策の立案・実施・レビュー過程において必要とされる科学的知見と、政策、法との関連性を学術的及び実践的に解明することを目的とする、国際的な社会科学と自然科学の連携研究(社理連携研究)として実施しているものです。

本セッションでは、国際的な南極政策立案過程における社会科学と自然科学の相互作用のあり方について、国内外の若手研究者を中心に4つの報告がされました。稲垣治・PCRC研究員は橋田元・国立極地研究所教授と共同で、「DROMLAN and the Antarctic Treaty System」と題して、南極ドロンニング・モード・ランド地域の航空ネットワーク(Dronning Maud Land Air Network: DROMLAN)運用に対する南極条約体制上の環境影響評価義務をめぐる諸問題について報告をしました。

幡谷咲子・神戸大学国際協力研究科博士後期課程学生は「Legal implications of Chinese Kunlun Station at Dome A and its ASMA/code of conduct proposals」と題して、中国による崑崙Dome A基地周辺における特別管理地区の設置案をめぐる法的及び政策的議論について報告をしました。


また、Arron Honniball・シンガポール国立大学研究員は「The Next Bastion in Combating IUU Fishing: The Role of Nationality Jurisdiction in CCAMLR & Beyond」と題して、世界的に問題となっている違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)に対する対策について南極海洋生物資源保全委員会(CCAMLR)及びその加盟国の取り組みについて報告をしました。

Jason Thomson・ルーベン・カトリック大学博士後期課程学生は「Border Drift: Norwegian Antarctic Territorial Expansion 1939-2017」と題して、今日領有権主張が凍結されている南極大陸において、ノルウェーが領有権を主張しているドロンニング・モード・ランド地域をめぐる国家実行の法的評価について報告をしました。

いずれの報告も、南極をめぐる政策・法・科学の複合的な問題について鋭い分析をするものであり、参加者からは多数の質問やコメントが寄せられ、活発な議論が行われました。

各報告の要旨については、こちらを参照ください。