神戸大学大学院農学研究科
土地環境学研究室

-Geotechnical Engineering for Agriculture-
− 研究テーマ −
当研究室で取り組んでいるのは主に下記のテーマですが,何も決まったものがあるわけではありません.自分のやる気次第で様々な問題にアタックすることもできます.また,私たち研究室だけではなく,農水省や農村工学研究所,NYコロンビア大学など外部の機関と連携して研究を遂行していくことも珍しくありません.過去の研究を含めた業績は,研究業績をご覧下さい.

溜池に流入する土石流の挙動解明と廃止溜池を活用した治水技術の確立に関する研究

農業用水を貯水する溜池は,谷や沢部に多く,豪雨により土石流が溜池に流入し,甚大な被害事例が増加しています(平成30年西日本豪雨では32箇所の溜池が決壊し死者も出ました).そこで,溜池決壊による事故を防ぐため,利用していない溜池堤体を開削し廃止する工事が急速に進められています.研究室では,土石流流下実験を実施し,溜池に流入する土石流の挙動の解明,廃止溜池の土石流堰き止め効果を検証することにより,治水技術の確立を目指しています.


矢板引き抜きに伴う埋設パイプラインの力学挙動に関する研究

農業用パイプラインの施工では,地盤を掘削し鋼矢板で土留めを行い,パイプを敷設し土を埋め戻した後,矢板を引き抜くという工法が一般的に採用されています.矢板引き抜きにより管周辺地盤の土圧が変化し,管の変形を引き起こすことがありますが,現行の設計基準は力学的根拠に基づいて作成されていません.そこで研究室では,矢板引き抜きを再現した土槽を用いた室内模型実験を行っています,管に計測器を装着し,DEM解析を実施し,力学的根拠に基づく新たな設計手法の確立を目指しています.


ため池の柔構造プレキャスト底樋の研究開発

ため池堤体の底には,ため池の水を取水し用水路に導水したり,ため池を空にするため場外に排水する底樋が設けられています.この底樋管はコンクリートブロックをボルトで連結した剛構造であるため,地盤の不同沈下に追従できず,ひび割れや漏水が発生することがあります.そこで,連結ボルトを外した底樋管を使って,地盤沈下を再現した模型実験や大型振動実験を行い,研究室では,不同沈下にも追従できる柔構造底樋の開発・新工法の提案に貢献しています.


地盤沈下に伴うポリエチレン管及びその継手部近傍における力学挙動に関する実験的検討

日本では泥炭地のような超軟弱地盤内に埋設された農業用パイプラインにおいて,不同沈下による破損事故が多く発生しています.また,その多くは特にパイプの継手で起こっています.これらの事故を防止するため,地盤追従性に優れたポリエチレンの一体管路(PE管)が使用されていますが,超軟弱地盤内におけるPE管やその継手に関する明確な設計や施工の指針がないのが現状です.そこで地盤沈下を再現した模型実験,泥炭地に埋設した実規模現場実験を通し,PE管の発生ひずみや沈下量について明らかにすることを目的とした研究を行っています.


越流を考慮した海岸堤防の構造形式に関する研究

本研究室のテーマのひとつは,津波による人命および社会インフラへの被害を軽減することを目的として,既存の海岸堤防を見直し,より良い設計手法について探求することです.2011年3月11日に発生した東日本大震災では,想定を超える巨大津波により多くの海岸堤防が破堤しました.今後も南海トラフなどの巨大災害の脅威が警鐘されており,巨大津波,すなわち,津波の越流をも考慮した海岸堤防へのアップデートが求められています.本研究室では特に,1. 津波の越流に対する海岸堤防背後地盤の洗堀抑制手法,2. 海岸堤防背後地における津波の減勢手法,3. 津波越流量の低減手法について様々なアプローチで検証を行います.


圧力管屈曲部軽量スラスト防護工法の研究開発

農業用パイプラインは内部に水圧をかけて水を送りますが,パイプラインには屈曲部が多く,曲管部にはスラスト力が発生します.このスラスト力に抵抗するため,通常曲管部にコンクリートブロックが使用されます.しかし地震でブロックが大きく移動し,管の継手部が抜ける被害が発生しています.そこで研究室では,管と砕石をジオグリッドで巻き,スラスト力に抵抗する工法の実用化に向けた研究をしています


ベントナイト系遮水シートが設置されたため池堤体の力学挙動に関する研究

我が国には約20万箇所のため池が存在しており、そのうち約7割が江戸時代に造られたため、老朽化したため池堤体の改修が急務であります.ため池堤体は,土質材料を盛立てて築造されます.改修工事では貯水機能を確保するために,堤体の一部に水を通しにくい粘性土を用いるのが一般的ですが,良質な粘性土が入手できない場合には,ベントナイト系遮水シートと呼ばれるシートを堤体の内部に設置して遮水することがあります.しかしながら,遮水シート工法の設計基準は確立されていないため,私たちの研究では,シートと土質材料の境界面での一面せん断試験や模型堤体の振動実験を実施しその基準の確立を目指しています.


消波ブロック被覆堤基礎地盤の吸出し現象に関する遠心模型実験

模型実験の問題点の1つに実際の構造物と模型との大きさの違いによる影響が挙げられます(縮尺効果).この問題を解決するために遠心力を模型に作用させて行う実験が遠心模型実験です.この方法は幅広い地盤工学の問題の解明に用いられていますが,海岸構造物基礎の吸出し現象や洗掘問題に着目した検討例は少ないのが現状です.本研究では,海岸構造物の問題の中でも,消波ブロック被覆堤基礎地盤における吸出し現象に焦点をあて,ドラム型遠心力模型実験装置を用いて遠心力場での波浪実験を行っています.また,既往研究と比較することで遠心模型実験の有効性などを評価しています.


パイプの管厚が埋設挙動特性に与える影響と設計手法の確立に関する研究

日本の農業用水用のパイプラインの設計では,パイプラインの厚さに材料の硬さを乗じた値がパイプラインの強度とされています.これは,柔らかい材料で作られた厚いパイプと,硬い材料で作られた薄いパイプは同じ程度の強度であるという考え方です.しかし,近年薄くて硬いパイプにおいて想定外の事故が多く発生するようになりました.これを受けて,パイプラインの設計基準を見直すべきという声が高まっています.そこで当研究室では,パイプラインの厚さが強度にどう影響を与えるかを実験や解析によって詳しく調査をしています.


地盤のせん断変形が地中構造物に与える影響

阪神大震災や東日本大震災をはじめとして,近年巨大地震が頻発しています.地震時における地中構造物の破壊は,被害の拡大を招くと共に,その後の復旧に大きな妨げとなります.私たちは,重要な地中構造物であるパイプラインを中心に,地震時の挙動を研究しています.研究には,アルミ積層体を用いた模型実験と2次元個別要素法解析(DEM)という手法を用いています.


不均一な地盤における埋設管挙動に関する研究

地震や集中豪雨による地盤の流出や局所的な破壊,施工時の不十分な埋戻しなどにより,埋設管の周辺地盤が不均一になることがあります.しかし,そのときの埋設管の変形挙動は十分に検討されていません.また,この不均一化が管軸方向の異なる断面で起こったときの中間断面での内部挙動もほとんど検討されていないのが現状です.そこで,本研究では,土槽内で不均一地盤を再現し,そのときの管の変形挙動や内部挙動を検討しています.また, 3次元FEM解析も行い,模型実験と解析の双方から検討を進めています.


老朽管の更正技術に関する研究

近年,高度経済成長期に建設された農業用水利施設の多くが耐用年数を迎えています.農業用パイプラインも例外ではなく,強度低下や地下水の浸入など様々な問題が発生しています.そのため,今後はこれらを計画的かつ経済的に補修,更生することが大切となってきます.その際の改修工法として検討されているのが管路更生工法です.管路更生工法は,簡単に言うと,古くなったパイプの中に新しいパイプを作ってしまう工法です.この工法は基本的に地面を掘る必要がありません.そのため工事に起因する騒音,振動,交通渋滞が少なく,周辺住民の生活への影響を最小化することが可能となります.当研究室では,この工法の適用時におけるメカニズムや,管に作用する力を明らかにするため,数値解析や施工実験などを行っています.


ため池コア材への底泥土再利用技術に関する研究

ため池とは農業用水を確保するための貯水池のことで,古くから築造されています.その数は,全国で約23万個,うち兵庫県は約4万4000個にのぼります.しかしながら,多くのため池で老朽化が進んでおり,早急な改修が求められています.さらに,兵庫県ではため池改修にふさわしい土が不足しているのが現状です.また,ため池の底には地球温暖化の原因ともなるメタンを発生させたり水質を悪化させる泥がたまり,環境に負荷を与えています.この研究では,その底泥土を改善して再利用した,環境にやさしく安価なため池用土の開発を行っています.環境や生態系を配慮したため池改修へ向けて日々研究に取り組んでいます.


薄肉円環の弾性理論による構造解の適用限界に関する研究


ジオシンセティクス用いた補強盛土と地中構造物の相互作用に関する研究


生分解コンクリートに関する研究


竹材を用いた土木材料の開発