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膜を利用した汚濁負荷の水質モニタリング

河川は陸域からの物質供給の主要な経路です。現在作物栽培や畜産などの農業や工業を含む,人間活動に起因する水質汚濁が欧米や中国など,これら産業の盛んな地域で深刻化しています。人類がこの地球で持続可能であるためには,プラネタリーバウンダリーや環境容量などの,環境が許容する物質循環量の枠の中に我々の物質循環を収める必要があります。水質汚濁に関しては,湖沼や海洋などの物質同化の可能量である環境容量以下に汚濁物質の排出を抑えねばなりません。しかしながら河川を流下する汚濁物質の量の推定が,水質モニタイリングの頻度が低いために大変不正確で,有効な対策につながっていません。

1.低頻度アクティブサンプリングに基づく汚濁負荷推定
 河川水質モニタリングはコストと労力の問題から多くの国で月1度の低頻度で実行されています。このような低頻度データでも長期間のデータ蓄積により,推定の確からしさを向上させることができます。具体的に10年間の月1度の低頻度データから,陸域から下流域へ供給される物質量の推定を実現するために,Horvitz-Thompson推定量に基づく手法を開発しています。この手法は瀬戸内海の貧栄養問題への陸域供給の寄与の解明や,琵琶湖などの閉鎖性水域での有機物や窒素分の陸域供給量の影響評価に利用できます。また後述のパッシブサンプリングの検証用の負荷量推定値もこの方法で得ることができます。

2.膜と吸着剤を用いた汚濁負荷モニタリング
 低頻度のアクティブサンプリングでは短期間の正確な負荷量推定が困難です。このため河川に採水器具を設置し,流水を連続的に捕集するパッシブサンプリングによる負荷量推定法の検討も行います。この手法の妥当性は,上記の手法や写真に示すようなオンサイト分析データによる妥当性の検証を必要とします。この問題の解決のためには,採水部の膜のファウリング対策と通水断面・流量変化に比例した捕集水量の確保が必要です。


負荷量推定のための渓流のオンサイト水質観測とアクティブサンプリングの実施例

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