研究部門
機能性薄膜研究部門
本研究部門では、次世代の光電子機能を有する薄膜デバイス創出および薄膜化プロセス技術の開発に向けた基礎学理の構築と応用に資する教育研究を行っています。
近年、軽量性、柔軟性、分子設計の多様性等の利点を有する有機材料を薄膜化して、有機エレクトルミネッセンス(EL)素子、 有機薄膜太陽電池あるいはメモリー、センサー等に応用する研究が活発に行われており、既に一部は実用化さています。有機材料の薄膜化手法も、真空蒸着などのドライプロセスに加え、印刷技術を利用するウエットプロセスへ展開を拡げています。この背景のもと、本研究部門では「1. ナノ構造制御した有機薄膜の新規作製プロセス開発」「2. センシング・創エネ応用に向けた有機強誘電体VDF系薄膜の開発」について、基礎から応用まで多様な研究を進めています。
また、燃料電池やリチウムイオン二次電池の電極膜、導電性薄膜などにおいて、粒子分散液から作成される塗布膜が、既に実用化されており、塗料の多くも機能性粒子が分散されています。本研究部門では、主に粒子分散材料を対象に「3. 粒子分散液内部構造のレオロジー解析」「4. 粒子分散液の塗布・乾燥プロセス解析」について、研究を行っています。
メンバー
- 舟橋 正浩 教授(部門長)
- 南 秀人 教授
- 菰田 悦之 准教授
- 堀家 匠平 准教授
- 鈴木 登代子 助教
- 小柴 康子 助手
Research Topics
カプセル粒子のシェル膜透過性制御
- 南 秀人
- 鈴木 登代子

中空高分子微粒子は,有用物質を封じ込めたマイクロカプセルなどとして実用化されています。本研究では,独自の中空化法を駆使し,シェル膜の構造や性質を制御することにより,含有物質の範囲拡大や内包物の放出速度の制御を行っています。例えば,シェル膜にイオン液体ポリマーを用いた場合,アニオン交換により中空粒子のシェル膜の性質を疎水性から親水性へと変化することで透過性の制御が可能となります。
*疎水性シェル(a,c),および親水性シェル(b,d)をもつ中空粒子を親水性蛍光染料(a,b)と疎水性蛍光染料(c,d)溶液に分散させた際の共焦点レーザー顕微鏡写真
粒子膜形成のための二次元コロイド構造体
- 南 秀人
- 鈴木 登代子

微粒子を配列・組織化させた集合体は,コロイド構造体と呼ばれ,新規な機能性材料への応用が期待されています。当研究グループでは,テンプレートを用いない粒子膜構造制御の基礎的検討として側面にのみ水素結合性ドナー(ポリアクリル酸)またはアクセプター(ポリビニルピロリドン)の分散安定剤が存在する円盤状粒子を利用して二次元方向に配列したコロイド構造体の作製を試みています。
液晶性混合伝導体薄膜のナノ構造制御とデバイス応用
- 舟橋 正浩
- 堀家 匠平
- 小柴 康子

拡張π電子共役系にシクロテトラシロキサン環を導入したナノ相分離型液晶性半導体は薄膜の酸蒸気曝露による重合・不溶化が可能です。側鎖にクラウンエーテルなどの機能性部位を導入することで、イオン伝導部位と電気化学活性部位が分離した電気化学機能薄膜を作製できます。エレクトロクロミズムやセンシングデバイスへの応用を検討しています。
カーボンナノチューブ薄膜の構造・機能制御とデバイス応用
- 舟橋 正浩
- 堀家 匠平
- 小柴 康子

カーボンナノチューブ(CNT)はsp2炭素の1次元ナノ構造体であり、優れた電気伝導特性などを示します。当部門では、CNTのデバイス機能を安定に変調するためのドーピング剤やドーピング手法の開発、1次元性ならではの機能発現に向けた配向制御に取り組んでいます。熱電発電素子、赤外線センサなどへの応用を目指した研究開発を行っています。
粒子分散液内部構造のレオロジー解析
- 菰田 悦之

粒子分散液から所望の構造の粒子含有薄膜を得るためには,溶液中で粒子が形成する内部構造を理解する必要がある.しかし,粒子分散液は通常不透明で透過光による計測・観察が行えない.このため,粒子分散液に印加した変形に対応する応力から内部構造が理解できるレオロジー解析が有用である.当研究室では,レオロジー解析にインピーダンス測定やパルスNMR測定を組み合わせ,スラリー内部構造やその動的変化の理解を目指している
粒子分散液の塗布・乾燥プロセス解析
- 菰田 悦之

塗布時のせん断流動場および乾燥時の溶媒蒸発場が粒子分散液の内部構造変化に与える影響について研究している.塗布装置に応じて異なるせん断履歴が内部構造や塗布膜形状に与える影響の解明に取り組んでいる.一方で,乾燥工程については,乾燥速度変化に加えて粒子充填・応力発生などの同時計測手法を構築し,所望の膜構造を得るための操作条件およびメカニズムを調べている.