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粒子分散液内部構造のレオロジー解析

  • 菰田 悦之

粒子分散液から所望の構造の粒子含有薄膜を得るためには,溶液中で粒子が形成する内部構造を理解する必要がある.しかし,粒子分散液は通常不透明で透過光による計測・観察が行えない.このため,粒子分散液に印加した変形に対応する応力から内部構造が理解できるレオロジー解析が有用である.当研究室では,レオロジー解析にインピーダンス測定やパルスNMR測定を組み合わせ,スラリー内部構造やその動的変化の理解を目指している.
下にリチウムイオン二次電池用正極スラリーの粘弾性挙動とそれから推定される内部構造の模式図を示す.PVDF溶液(グレー)とそれに粗大なかつ物質粒子(LCO)を加えたLCOスラリー(水色)は,ニュートン流体の特徴を示し,弾性率の増加はLCO粒子添加量で説明できる.すなわち,LCO粒子は完全分散できる.一方で,PVDF溶液にアセチレンブラック(AB)を微量添加すると,弾性が支配的な固体的な挙動を示し,ABがネットワーク構造を形成したことがわかる.すなわち,正極スラリーの分散操作にはABのネットワーク構造を分断せずにLCO粒子をその中にいかに一様分散させるかが求められる.

図 LiB正極スラリーの粘弾性とそれから推定される内部構造


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