研究部門
水処理膜研究部門
水処理を目的とした分離膜は、水道水を浄化する中空糸膜、海水を淡水化する逆浸透膜、工業排水をろ過する分離膜など様々な形で産業化され、我々の生活に役立っています。
この背景のもと、水処理膜研究部門は水処理膜をさらに高機能化するために必要な知的基盤を構築し、その基盤にもとづいて高機能膜を実現するためのエンジニアリングと社会実装を追求する研究部門です。高機能な水処理膜から新しいサイエンスを見いだしていくことも重要な目標です。研究チームごとの研究開発テーマは以下のとおりです。
- 2次元ナノチャネルを有するナノシート積層脱塩膜(松山秀人・Kecheng GUAN)
- 正浸透を利用した省エネルギー膜分離法の開発検討(松山秀人)
- 畜産酪農排水の資源化をめざす分離技術開発(井原一高)
- 処理水–膜界面の分子論的計測評価手法の開発(大西洋)
メンバー
- 大西 洋 教授(部門長)
- 井原 一高 教授
- 松山 秀人 教授
- 吉田 弦 助教
- Kecheng GUAN 助教
- Zhaohuan MAI 特命助教
- Mengyang HU 特命助教
Research Topics
2次元ナノチャネルを有するナノシート積層脱塩膜
膜分離法は従来の蒸発法などに比べて省エネルギーな水処理手法として注目されています。膜分離法は海水淡水化等において既に実用化されているものの、透水性と塩除去性能にはトレードオフの関係があります。当グループでは、このトレードオフを脱却し、さらに高性能な分離膜を開発するべく、新規材料を用いた膜開発を進めています。例えば最近では、酸化グラフェンと呼ばれる2次元材料(ナノシート)を積層することによって高い性能を有する脱塩膜の開発に成功しています(図1)。この膜は、ナノシートを用いることにより、約50 nmという非常に薄い膜を作製することが可能です(図2)。このように超薄膜を形成することで、高い透水性能を発揮します。現在、NaClに対して95 %以上の阻止性能を発揮することに成功しています。このナノシート積層膜は、酸化グラフェンの還元度合いの制御や、層間にポルフィリンなどの分子を添加することにより、膜性能の制御が可能です。当グループでは、このような新規材料を用いた高性能水処理膜の開発検討を進めています。
正浸透を利用した省エネルギー膜分離法の開発検討
近年、膜分離の駆動エネルギーを最小限に削減することを目的とし、浸透圧エネルギーを利用した正浸透膜法と呼ばれるプロセスが注目されています。我々は濃縮プロセスに対する正浸透膜プロセスの応用に注目し、省エネルギーな廃水からの有用資源の回収方法の開発を行っています。正浸透膜法の実現のためには、目的のプロセスに適した膜材料の開発と大きな浸透圧エネルギーを持った駆動溶液の開発が必要です。我々はアンモニア濃縮に適する膜の開発と、再利用が可能な温度応答性材料を用いた機能性駆動溶液の開発を行っています。
分離技術を利用した畜産・食品バイオマスのエネルギー変換と循環
処理水–膜界面の分子論的計測評価手法の開発
世界最先端の走査型プローブ顕微鏡をベースとして、膜材料と液体が接する界面の組成・構造・力学応答などを顕微計測する手法を開発しています。化学工学・応用化学・機械工学・鉱物学をはじめとして幅広い研究分野に属する産官学の国内研究者、さらに海外研究者との協働によって新しいサイエンスをつくっています。